研究課題/領域番号 |
24531063
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
大前 敦巳 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50262481)
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キーワード | 教育社会学 / 高等教育 / 比較教育 / フランス / 新構想大学 / 職業専門化 / 教育刷新 |
研究概要 |
本年度は、日仏の1960年代以降における新構想大学創設の政策形成過程について、文書資料および訪問調査によるデータの収集を行い、それを主に政策立案者の社会的位置関係から分析し、学会発表と論文執筆を行った。 日本で当時「中教審路線」と呼ばれた筑波大学創設に至る政策集団の中で交わされた議論に着目し、ユネスコやOECD等の国際機関とつながりをもつ官僚のイニシアティブの下で、カリフォルニア大学等の欧米の新大学モデルのキャッチアップと、国内権益を重視する政財界の支援が結びついて、新構想大学のプランが作られていったことを明らかにし、9月に国内学会発表を行い、12月に日仏比較の観点から国際発表を行った。国際発表原稿は出版の予定となり、編集者を通じて原稿のリライトを行った。また、当時の政策形成に関わった大学関係者へのインタビュー調査を実施した。 フランスでは1968年以降に創設されたパリ第8~13大学を中心に、大学関係者への訪問調査を通じて40~50周年を迎える学内資料の収集を行うとともに、1984年創設のルアーブル大学と2007年創設のニーム大学を訪問し、特に職業専門化や学生支援等の教育刷新の展開について聞き取り調査を実施した。1960年代以降の新構想大学における教育刷新に関する論文を執筆し、日仏比較に向けたアウトラインに関する学会発表を行い、次年度の発表に向けて個別大学の情報資料を整理・分析した。 上記に関連して、5月に日仏会館で開催されたフランス人講演会にコメンテーターとして参加し、日仏の大学における職業専門化の変容について報告を行った。また、フランスで新興学問分野として英米諸国の研究方法の影響を受けて発展した、教育社会学の経験的研究の展開に関するレビュー論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画に従い、日仏の新構想大学(日本:筑波大学、新教育大学等、フランス:パリ第8~13大学、ルアーブル大学、ニーム大学)を対象に、各大学の内部資料を中心に追加情報の収集・整理を行い、大学関係者にインタビュー調査を実施した。学会報告と論文執筆は、ほぼ予定通り進めることができた。ただし、電子文書化したデータベースの作成作業は、作業補助を依頼しなかったこともあり完成に至っていない。また、年度末に日仏両語による調査報告書を作成することはできなかったが、パリ第8大学のシャルル・スリエ氏が編集者となって仏語発表原稿の出版予定が決まり、それに向けた原稿のリライトを行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、日仏の新構想大学における個別大学データの分析を進めるとともに、主に文科系分野の役職経験者を対象に第二次聞き取り調査を実施して追加情報補完を行う。前年度と同様、日本では筆者が所属する上越教育大学と、筑波大学の人文社会科学系学群・学類を主なフィールドとする。フランスでは、1968年を契機に創設されたパリ第8~13大学と、1984年創設のルアーブル大学、2007年創設のニーム大学を対象とし、1960年代から近年にかけての新構想大学における教育刷新の展開について比較検討を行う。 4~6月に、各大学の創設に至った政策形成過程を、文部省(当時)・中央教育審議会やフランス国民教育・高等教育省の行政文書および個別大学の内部資料に基づいて、さらに精緻化したデータ分析作業を行い、7~8月に第二次聞き取り調査を実施することにより、9月の日本教育社会学会で研究報告を行う。また、フランスのルアーブル大学とニーム大学における、近年の新構想大学における教育刷新の展開について、11月の日仏教育学会で発表する。それに先立ち、10~11月にフランスの大学関係者を対象にインタビュー調査による情報補完を行う。 以上の研究結果について、論文を執筆・投稿するとともに、平成27年1~3月に最終報告書とそのフランス語要約を作成し(CD-ROM版および自家製本)関係者に送付する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月22日~4月3日にフランスで訪問調査を実施し、年度をまたいでの渡航期間であったため、未使用額の350,049円を翌年度に繰り越す形で使用した。 2014年3月22日~4月3日のフランス訪問調査により、未使用額の350,049円は執行済みである。
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