平成26年度は、日仏の1960年代における新構想大学創設の政策形成過程について、個別大学に関する資料収集と分析を行い、特に新構想大学創設に向けた「計画planning」に着目した日仏比較を企て、研究期間全体を通じた成果について最終報告書を作成した。 ユネスコやOECDなどの国際機関を通じて日仏ともに経済計画・都市計画・教育計画などが進展する中、日本で欧米の「計画」をキャッチアップしながら洗練化を図っていた様相を明らかにし、学会発表と論文執筆を行った。また、前年度に行った国際発表をもとに、その政策を担った「中教審路線」の社会的位置についてフランス語で書籍原稿を執筆した。 フランスでも戦後の経済社会発展計画に伴って高等教育の整備が進められ、その後1980年代のバカロレア取得率80%目標に伴って1984年に新設されたルアーブル大学と、最も新しく2007年に設立されたニーム大学での訪問調査に基づいて、今日に至る職業養成教育を促す大学改善の問題点を学会シンポジウムで議論した。 上記に関連して、フランスの学力格差是正策に関する書籍原稿と、ワーク・ライフ・バランスに関する書評原稿を執筆した。 年度末には、交付期間中に学会や研究会で発表した原稿とフランス高等教育改革に関する書評原稿を集録した最終報告書を作成し、日仏の関係者に送付した。本研究で設定した課題に対しては、①日仏ともに経済発展、教育拡大、人的資本、生涯教育等の社会的養成を受けて新構想大学創設の「計画」が立案され、ディシプリン複合性・学際性に基づく職業養成教育が進展していったこと、②女性、社会人、外国人など多様化した学生の教育機会拡大に新構想大学が貢献し、教育刷新を先導していったことを明らかにしたとともに、両国の大学改革に伴って教育の変化に及ぼした様々な差異を比較した。
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