研究課題/領域番号 |
24531064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
服部 美奈 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30298442)
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研究分担者 |
西野 節男 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10172678)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / インドネシア / マレーシア / イスラーム宗教指導者養成 / 宗教間融和 |
研究概要 |
本研究は、イスラーム共同体の意思形成の思想的・精神的要となるイスラーム宗教指導者が現在の教育機構のなかでいかに養成されているのか、そしてイスラーム宗教指導者たちはイスラーム学の伝統を維持する一方で、多宗教間・多元的価値の共存に必要な宗教間融和をいかなる形で促進しているかを明らかにすることを第一の目的とする。そして、最終的には宗教間融和に果たす宗教指導者の役割に関する提言を行うことを第二の目的とする。 初年度の2012年度は、インドネシアとマレーシアにおけるイスラーム宗教指導者の現代的養成に関する分析、およびインドネシアでの現地調査を実施した。現地調査にあたっては、海外共同研究者と共に、イスラーム宗教指導者を輩出している教育機関やイスラーム組織、さらに当該社会に深い思想的影響を与えているイスラーム宗教指導者を選定した。分析項目・枠組みは以下の2点である。①イスラーム宗教指導者養成の歴史的推移と現状を分析する。分析では養成形態の歴史的変化と現代的特徴、宗教指導者の思想的特徴を分類する。②イスラーム宗教指導者の思想的特徴について、特に現代的要請である宗教間融和の観点から分析する。同時に、各地で影響力をもつイスラーム宗教指導者がいかなる特質によってムスリム民衆に支持されるのかを具体的に考察する。 現地調査を行ったインドネシアでは重点的に西ジャワ州のイスラーム寄宿学校(プサントレン)を中心に調査を実施した。その結果、現代のイスラーム宗教指導者養成は非常に多様化しており、カリキュラムや指導者観にも顕著な差異がみられることが明らかになった。一方、指導者の宗教間融和に対する考え方も多様であったが、概してそのための教育実践は限定的なものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的からみて、初年度の研究は概ね達成された。具体的には、イスラーム共同体の意思形成の思想的・精神的要となるイスラーム宗教指導者が現在の教育機構のなかでいかに養成されているのか、そしてイスラーム宗教指導者たちはイスラーム学の伝統を維持する一方で、多宗教間・多元的価値の共存に必要な宗教間融和をいかなる形で促進しているかに関して、インドネシアとマレーシアを対象に研究を行い、インドネシアにおいては現地調査を実施した。同時に、宗教間融和に果たす宗教指導者の役割に関する提言の基礎資料を収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、トルコとオランダを対象地域とし、トルコ系イスラーム宗教指導者養成に関する分析および現地調査を実施する。また平成24年度と同様、現在、イスラーム共同体において影響力をもつイスラーム宗教指導者に関する情報収集および宗教指導者へのインタビューを行う。調査の実施形態・内容は平成24年度のインドネシア・マレーシア調査と同様である。トルコおよびオランダ調査を実施する理由は、西欧諸国に多くの移民を送り出してきたトルコ人ムスリムが、その移住先のオランダ社会のなかでイスラーム宗教指導者を生み出し、マイノリティ・ムスリムの価値形成に深い影響を与えていることによる。またトルコは近年、イスラーム世界で新たな教育活動を展開するギュレン(M.Fethullah Gulen: 1941-)をはじめ、新しい指導者を輩出する国として注目に値することによる。 最終年度の平成26年度は当初の予定通り、国際シンポジウムを開催(開催地は日本)する。国際シンポジウムでは、各地域の専門家(海外共同研究者として本研究に参加)およびイスラーム宗教指導者を招聘し、イスラーム宗教指導者の現代的養成、宗教間融和における宗教指導者の役割に関する情報を共有し、国際比較の観点から考察を行う。その際、対象とする地域はインドネシアとマレーシアをはじめとする東南アジア地域および、トルコ、オランダである。対象国の選定理由は上述した通りであるが、加えてオランダはライデン大学や現代イスラーム研究機構(International Institute for the Study of Islam in the Modern World:ISIM)等においてイスラーム研究が発展しており、それらの研究機関との交流が研究課題をさらに深化させると考えたためである。この国際シンポジウムの成果は最終的に書籍(英語)として刊行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成25年度)の研究費は主に海外調査に当てる計画である。現在のところ、備品や高価な消耗品の購入予定はない。また最終年度(平成26年度)は前述の通り、国際シンポジウムを開催するため、研究者の招聘費用として研究費を一部、使用する予定である。
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