研究課題/領域番号 |
24531065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
江成 幸 三重大学, 人文学部, 准教授 (20269682)
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研究分担者 |
藤本 久司 三重大学, 人文学部, 准教授 (40345963)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 講師 (50456810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多文化共生 / 外国人児童生徒 / ブラジル人住民 / 学習支援活動 / 進路保障 |
研究概要 |
平成24年度は、三重県内の外国人登録者が多い自治体のうち、四日市市に関する研究を進めた。また、松阪市および津市の初期適応支援教室、外国人児童生徒向けの進路ガイダンス、高校での日本語学習支援の実施について、教育委員会と協力しながら情報収集を行った。 四日市市での調査研究は、ブラジル人住民の比率が高いUR集合住宅を擁する地区を対象に、フィールドワークおよびヒアリングを継続しており、平成23年度に日本人住民とブラジル人住民にアンケートを実施した。本年度はその結果をもとに、外国人児童生徒を対象とした学習支援の実践事例をまとめたほか、公立学校での受け入れおよび外国人の子どもたちの将来に関し、日本人・ブラジル人双方の住民意識を分析した。 四日市市は多文化共生を市政の目標に掲げ、外国人児童生徒に関わる教育施策として、日本語の入門を教える初期適応支援教室、在籍校で取り出し支援を行う国際学級、地域における日本語・学習支援教室が実現されている。なお、市内にブラジル人学校があり、選択肢の一つとなっている。 子どもを持つブラジル人住民にアンケートを取ったところ、ブラジル人学校には小学生で約3割、中高生では約半数が通学している。子どもが地区の公立学校に通う家庭を含め、日本の教育環境には約8割が満足と答えた。子どもへの支援内容としては、特に就学資金援助と日本語向上を望んでいることが明らかになった。 一方、日本人住民を対象としたアンケートでは、地域の高齢化を反映して回答者の6割以上が60歳以上であり、永住志向が7割を超えている。日本人住民は概ね「多文化共生」に理解を示し、外国人の子どもに日本語と日本の習慣を身につけてほしいと考えているが、経済的援助には関心が低かった。このような、日本人とブラジル人の期待が一致しない領域を、公立学校および地域の日本語指導・学習支援活動が担っていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四日市市の事例研究に関し、平成24年度末に日本人・ブラジル人住民調査報告書をとりまとめた。その他にも、定住ブラジル人の子どもの受け入れに関する論文など、複数の成果を発表することができた。三重県下の他の自治体の状況についても、本格的な調査の準備段階として、教育委員会および多文化共生施策の担当者と情報交換を行っており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
三重県内の事例研究に関し、研究代表者と共同研究者のそれぞれが、主に担当する自治体を決めており、継続的に調査を行う体制ができている。外国人住民を対象とする調査については、すでに実施したブラジル人住民アンケートをもとに、スペイン語およびタガログ語での調査に着手できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、(1)福本(研究分担者・宮崎産業経営大学)を中心に量的調査を進めており、三重県で行う現地調査と打合せの際に出張費を使用する。また新任校のため文献収集の費用と、所属機関で行うデータ処理の人件費を見込んでいる。(2)江成(研究代表者)、藤本(研究分担者)、および研究協力者が中心となり、三重県下の津市、松阪市、四日市市、鈴鹿市、伊賀市の行政、教育機関、支援団体に聞き取り調査を継続する。(3)三重県との比較事例として、江成が欧米の受け入れ国における子どもの教育支援に関する現地調査、藤本が県外の外国人集住都市での聞き取り調査を行う。
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