本研究における外国出身児童生徒とは、教育関係者のあいだで用いられる「外国につながる子ども」と同義である。三重県では、南米、フィリピン、中国などにルーツを持つ子どもの在学数が増加している。日本生まれや日本国籍の子ども含み、国際社会学での移民第二世代ないし一・五世代にあたる。本研究は、三重県内で行われている外国出身児童生徒の進路支援と、その活動に関わるアクターについて、次の三つの観点から検討した。 第一に、外国人が集住する郊外団地の事例研究により、外国人児童生徒の受け入れが、多文化共生施策の重点課題となっていることを明らかにした。調査地域では、在来の日本人住民が放課後学習支援の改革に関わるなど、校区の学力向上への関心から、行政との連携を牽引している。 第二に、各支援アクター(教育委員会、国際交流の公共団体、翻訳NPO、学習支援ボランティア等)への聞き取りにもとづき、県内全般に、ネットワークの継続性と役割分担の定着を指摘した。具体的には高校進学の準備として、外国人保護者と子どもを対象とした進学ガイダンスの例年開催、毎年更新される入試実施要項の外国語翻訳と周知、出身国の中学校卒業後に来日し進学を希望する子どもについての情報共有などが挙げられる。 第三に、外国人住民アンケート調査と参与観察の結果、来日した親世代は、子どもに高校以上の専門教育を望む傾向が示された。教育への期待は、労働市場の厳しい競争を背景としており、子ども自身の目標形成の契機にもなっている。親子が共有している教育目標を、主体的で幅広い選択肢につなげるには、保護者に届く進路情報の充実が欠かせない。地域の支援アクターは、児童生徒の日本語・教科学習にとどまらず、やさしい日本語や通訳翻訳の必要性に配慮しながら、保護者と信頼関係を構築することが重要と考えられる。
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