移民子弟を対象とした教育活動の場として、学校は大きな役割を担っている。しかし、学校だけでなく、地域の行政機関や公立図書館もまた、彼らの教育活動の重要なアクターである。この重層的な取り組みは、異文化を背景とする子どもたちの教育を支える一つの形として参考になりうる。 イタリアの公立学校に通う移民児童生徒の出身地域・国は多岐にわたっている。「特に、ある地域からの出身者が多いという傾向がない」というのが特徴である。つまり、移民生徒を対象とした異文化間教育のナショナル・モデルは存在しえないと言える。各地域、各学校が、独自の対処に迫られるというわけである。 ブレシャ県キアラ市の中学校では、編入する移民生徒の配属について、彼らの学習レベルをはかるプロジェクトを、ブレシャ県との共同で展開していた。イタリアの統合政策では、移民はA2レベルのイタリア語を獲得することを求めている。そのための80~100時間イタリア語習得プログラムがある。移民生徒にも活用されており、イタリア語を話せない移民生徒に対して、学校は「取り出し授業」を行っていない。上記のイタリア語習得プログラムでまかなう必要がある。学校では、移民生徒のパフォーマンスの差が出身地域によるものだとは考えていない。あくまで各家庭のインセンティブの問題だと捉えている。しかし、不就学問題を考えた時、公式のデータには記載されていないが、町で実際に目にする中国出身の子どもたちの存在を挙げることになる。 学校では、公式データから逸脱する移民子弟が存在するのだ。彼らの利用可能な学習機関として、図書館がある。個人が利用する学習の場としての機能だけでなく、図書館が提供する様々なプログラムによって教育的機能も有している。幾つものセーフティネットが存在しているとも言える。ただ、セーフティネットが多様なため、それらの連携が難しいという側面をもつ。
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