研究課題/領域番号 |
24531067
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青木 利夫 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (40304365)
|
キーワード | メキシコ / 農村教育 / 農村教師 / 多文化主義 / 多文化教育 / 二言語文化間教育 / インターカルチュラル教育 / 先住民 |
研究概要 |
本年度は、メキシコの公教育制度のなかで「二文化二言語教育」から「二言語文化間教育」へと先住民の教育にかかわる政策が転換する過程において、教師がどのような役割をはたしていたのかを明らかにするため、教師の回想録、住民の請願書などの一次資料および先行研究や研究補助者の調査にもとづく資料を分析した。その結果、国家主導による「二言語文化間教育」が、支配文化と先住民文化のあいだにある格差を問題とし、その格差の解消をめざすという理念をもちつつも、それが実行に移されるにあたっては、方法や教材や人材などの点においてかならずしも十分とはいえず、また、その内容が地域住民の言語や日常生活からややかけ離れている場合があり、そうしたことから当該教育の普及が進まない地域があることが明らかになった。実際の教育現場では、先住民文化のもつ重要性を認めるものの、学校教育においては、スペイン語という共通語をはじめとする支配文化を伝達することに重点をおく教師や住民が存在する一方で、先住民文化を支配文化と同じく重視して伝達しようとする教師がいるというのが現状である。すなわち、先住民文化の価値を重視する教育政策にたいして多様な考え方があり、そのため教育実践は地域によって大きく異なっている。こうした研究成果は、現在、学術論文として発表する準備を進めている。また、昨年度の研究成果の一部である農村教師の自叙伝を資料とした論文は、現在、印刷中となっており2014度中に刊行される。 本研究課題を遂行していくなかで、教師や住民に焦点をあてるだけではなく、教育を受ける側である子どもの視点を加えることの重要性が浮かびあがってきた。子どもたちが学校教育をどのように捉えているのかを探るための資料をどうするかという大きな問題があるものの、今後、本研究課題を子どもの視点からさらに展開するための予備的な調査もあわせておこなう予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、論文としてまとめた昨年度の研究成果を完成原稿として出版社に提出し、学術図書の一部として刊行する。また、メキシコにおける二言語文化間教育の問題点を分析した論文をほぼ完成させ、現在、編者として出版を準備している学術図書の一部として公表する作業を進めている。このように、研究はおおむね順調に進展しているが、当初計画していた師範学校および国際機関に関する資料の調査および収集という点で予定より若干遅れている。本年度も、昨年度に引き続き、メキシコの国立図書館など関係機関において資料の調査・収集をおこなったが、滞在期間が予定通り確保できなかったため、資料の収集がかならずしも十分にはおこなうことができなかった。この点は、次年度において資料の追加調査をおこなうことによって補いたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、メキシコの関係機関において、補足的な資料の調査および収集をおこなう。とくに、師範学校および国際機関に関する資料の調査・収集に重点を置く予定である。そして、すでに入手済みのものとあわせて収集した資料を分析し、メキシコにおいて多文化共存社会の構築に向けた教員の役割およびその問題点について検討する。また、本研究課題の終了後を見据え、研究実績の概要のところで述べたとおり、これまでの研究を子どもの視点からさらに展開するための予備的な調査・研究も平行しておこなう予定である。
|