研究課題/領域番号 |
24531069
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
荒牧 草平 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90321562)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 親族 / 家族制度 / 階層 |
研究概要 |
今年度の研究実施計画に基づき、研究課題1「教育達成に対する『拡大家族効果』に関する実証的な把握」を中心に研究を進めた。具体的には、全国家族調査(NFRJ)データの分析を進め、1)孫の教育達成に対する祖父母学歴の効果に関する研究(『家族社会学研究』に掲載)、2)教育達成に対する祖父母とオジオバの効果および家族制度との関連に関する研究(『季刊 家計経済研究』に掲載)、3)前記2論文に関連した分析の概要に関する国際学会(PSID Conference: Inequality across Multiple Generations)での報告、4)国際学会での報告のベースとなった研究に関する論文の執筆(Quantitative Picture of Contemporary Japanese Families の1章として掲載)を行った。 なお、3)の国際学会における口頭発表に関して、教育達成に対するオジオバの効果については国際的にも研究例がほとんどないこと、祖父母の効果についても日本の研究事例が国際的にほとんど知られていないこともあり、予想以上の反響が得られた。そのため、日本に帰国後も海外の数名の研究者と研究交流を行うことが可能となった。さらに、これらの議論もふまえて分析を発展させ、階層研究に関する国際的な専門誌へ論文の投稿を行った(審査中)。特にオジオバの効果については海外にも研究事例がないため、国際学会や英文論文で公表できたことは、大きな成果であった。また、拡大家族効果の背景として、日本の家族制度との関連に踏み込んで分析を進められたことも、今年度の成果であったと言える。 また、研究課題2「実証的知見を階層化理論によって説明する試み」についても研究を進め、博士論文の一部として執筆を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の初年度から研究成果を積極的に公表することは、当初からの計画であった。しかしながら、初年度に想定していたのは、日本語による論文の公表と国際学会における口頭発表であり、英文による論文の公表は、研究期間の最終年までに達成する計画であった。ところが、国際学会において当初の予想以上の反響が得られ、海外の多くの研究者と交流できたこと、その影響もあり英文による論文の公表まで到達できたことは、期待以上の成果であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1「教育達成に対する「拡大家族効果」に関する実証的な把握」については、初年度において、当初の計画以上の成果をあげることができた。したがって、今後は、研究課題2「実証的知見の階層化による説明」および研究課題3「階層結合や社会関係資本および家族社会学的な理論・概念との接合」に力を入れて進めていく。 このうち研究課題2については、当初想定していた、相対的リスク回避仮説や文化資本論に加え、個人の意識や意思決定に着目した研究、具体的には、ウィスコンシン・モデルやGambetta(1987)のモデルなども参照し、理解を深めるとともに、拡大家族効果の説明可能性を検討する。 また、研究課題3については、今年度の研究成果をふまえ、特に日本の家族制度との関連について研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の通り、研究課題2および3を中心に研究を進めるにあたって、関連する文献・資料の収集・整理の費用が必要となる。また、研究経過を報告するために旅費を必要とする。
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