研究課題/領域番号 |
24531070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
東野 充成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90389809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 保育所民営化 / 新自由主義 |
研究概要 |
平成24年度は、資料の収集および一部の判決について分析した。 資料収集では、大東市役所、高石市役所、横浜市役所に赴き、当該市において公立保育所の民営化がなされた際の行政文書や議会の議事録を収集した。これらの資料は今後、公立保育所民営化の過程(市における政策決定過程、議会における条例案の審議過程等)を分析するのに活用する予定である。 また、判決の分析では、大東市訴訟、高石市訴訟及び横浜市訴訟の原判決および控訴審判決を分析した。その結果、3件の裁判に共通する保護者の論理と地方自治体の論理を見出すことができた。保護者の論理としては、子どもの発達保証を論拠として民営化に反対していること、地方自治体の論理としては、行財政改革の進展を論拠に民営化を推進していることなどを見出すことができた。保護者の論理と地方自治体の論理は3件の裁判で共通するにもかかわらず、裁判所の判断は大きく分かれた。地方自治体の首長が有する公営物の管理にかかる裁量権をもとに保育所民営化の正当性を認めた判決、民営化そのものは是認する一方、その手続きに瑕疵が存するとして、保護者への損害賠償を命じた判決、児童福祉法に基づく保護者の選択権を法的権利と認めて保育所民営化を否定した判決と、判決内容は三分された。以上より、保育所民営化をめぐってさまざまな言説が錯綜している実態を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、平成24年度は主に資料の収集および3件の判決の分析を遂行することとしていた。 先に述べたように、本年度には大東市、高石市及び横浜市に赴き、資料を収集することができた。また、これら資料及び判決文をもとに、大東市訴訟、高石市訴訟及び横浜市訴訟の分析も完遂することができた。 ただし、従来の研究計画では、本年度は枚方市訴訟を分析する予定であったが、資料収集の都合から、横浜市訴訟を先に分析することとした。順序は入れ替わったが、結果的に従前予定していた3件の裁判の分析を完遂することができた。 以上より、研究計画に記した「研究の目的」については、今年度までのところ、計画通り十全に達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度中に、いまだ資料収集が完成していない自治体(枚方市、神戸市、川崎市、八千代市)に赴き、公文書、議事録等の資料の収集を完成させる予定である。また、これら資料及び判決文をもとに、研究計画で予定している、枚方市訴訟、神戸市訴訟及び川崎市訴訟の分析を遂行する予定である。 平成26年度には、残りの八千代市訴訟を分析したうえで、研究成果報告書を刊行する。その際、それまでに収集した資料を基に、判決文だけでなく、行政の公文書、議会の議事録等も分析に加え、研究に厚みが増すよう工夫する。また、当研究で得られた知見を広く社会に還元するため、学会発表及び論文の投稿等を順次行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画の第一は、資料収集である。そのため、いまだ資料収集をしていない枚方市、神戸市、川崎市、八千代市に赴き、資料を収集する。そのために、まず旅費として研究費を支出する。 ついで、収集した資料及び判決の分析に必要となる、書籍、物品(ファイル等)等を購入する。 また、研究が進捗した段階で学会発表や論文の投稿を行うので、学会参加費等その他の支出も予定している。
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