より公正な民主主義社会の構築という理念に根ざしたカリキュラム・教育方法論の理論・実践両面にわたる研究を目指すという本研究の主旨に照らして、学会における研究発表とともに、教育現場におけるアクション・リサーチにも取り組んだ。具体的には、以下のようになる。 1)学会発表:批判的教育学の観点から見た原子力・エネルギー教育の諸問題について、および、個別化・個性化教育が持つ政治的意味について、それぞれ報告した。 2)アクション・リサーチ:昨年度につづいて、都内の公立小学校で、現場の教師陣と協力しながら、自立型教科学習(単元内自由進度学習)の単元開発に取り組み、自主公開研究会を開催した。また、新たに別の小学校でも、同様の取組を開始した。 3)日米の学校における実地調査:昨年と同様に、信州と山形において従来から子どもの主体性を活かした授業を展開してきた公立学校を訪問取材するとともに、アメリカ合衆国では、ニューヨークのCPE1、およびボストンのMission Hill Schoolでも実地調査を扱い質的データの収集に努めた。 4)著作出版:より公正な民主主義社会の構築に寄与しうる資質・能力、ないし市民性として「進歩主義的主体性」という概念を提起し、この資質・能力を明確化する理論的作業と、その資質・能力を育成する実践事例を取り上げた比較的長い論文を収めた共著書を上梓した。また、上で触れた原子力・エネルギー教育に関する批判的研究を論文化した章を含む共著本も刊行の運びとなった。
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