本年度は最終年度にあたるため、これまでのパネルデータや回顧式データを用いた分析の研究成果をいくつかの著作・論文にまとめたり、その成果を報告したりした。 まず東京大学社会科学研究所で行っているJapanese Life Course Panel Survey (JLPS)を利用して、2007年以降の政治意識や政党支持に関するパネルデータ分析(hybrid model)を行ったものを、勁草書房から刊行した『なぜ日本の公教育費は少ないのか』の中に含めた。この著書は、第36回サントリー学芸賞(政治・経済部門)を受賞することとなり、本研究課題の中で最も重要な成果となった。また前年度刊行の教育社会学研究に発表した傾向スコアを用いた因果効果に関する分析は、日本教育社会学会奨励賞を受賞した。 SSMやJLPSのデータを用いた分析は、学校から労働市場への移行、就職後の職業継続に関する生存分析の分析事例として、放送大学の『教育の社会学』(近藤博之・岩井八郎編)で触れて、こうした時系列の分析の重要性を訴えた。またSSMの台湾データとJLPSデータの職歴データから、両者の労働市場のあり方について比較分析を行ったものをペーパーにまとめた。 口頭報告としては、年度末のシンポジウムで潜在混合モデル(latent mixture model)を用いた分析事例を紹介したほか、海外の学会でトラッキングの効果について傾向スコア・マッチングを用いた分析を報告した。
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