研究課題/領域番号 |
24531081
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
山崎 その 京都外国語大学, 総合企画室, 参事 (70449502)
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研究分担者 |
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
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キーワード | 大学経営 / ガバナンス / 経営効率性 / DEA / Malmquist生産性指数 |
研究概要 |
本研究の目的は、大学を教育・研究・社会サービス等を生産する主体と捉え、その活動を効率性の視点から定量的に分析し、その結果を大学の内部要因(使命・計画、組織構造・構成員・ガバナンス)と外部要因(補助金・認証評価制度)の関係から考察して、組織設計上の問題点を明らかにすることである。また、大学の戦略的経営に役立つ定量的分析ツールの開発も目的としている。 平成25年度は、平成24年度に実施した大学経営の実態を把握するためのアンケート調査のデータを用いた分析を、研究協力者も加えたメンバーで複数の視点から分担して行い、その成果について研究会でディスカッションした。また、研究会の成果を学会で研究発表した。 分析の方法は昨年度に引き続いて、効率性の計測については包絡分析法(DEA:Data Envelopment Analysis)を用いた。因果関係については重回帰分析及び構造方程式モデリング(AMOS)を用いた分析を行った。平成25年度に付加した新しい視点は、効率性をさらに厳密に定義し、効率性(最小のインプットで最大のアウトプットが得られているか)と有効性(初期の目的が達成されているか)に分けたことである。分析の結果から、効率性と有効性では内部要因(組織構造・大学の理念・ガバナンス・マネジメント等)や外部要因(高等教育政策・認証評価制度等)との因果関係に違いがあることが明らかになった。 なお、平成25年度もアンケート調査を行う予定であったが、次の二つの理由によって実施しないこととした。一つは大方のデータが1年の経過ではほとんど差がみられないこと、もう一つは近年、とくにこういったアンケート調査が増えたため、回答者の過重負担によって協力が得られず、回収率が下がる危険性があると考えたためである。ただし、時間的変化を分析するパネルデータを収集するため、平成26年度はアンケート調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25度の研究計画は、まず平成24年度の調査から得られたデータを分析し、効率性評価の対象とする大学を選択することであった。しかし、アンケート調査の内容が、大学経営の現状を定量的なデータで把握する第一部(I大学全体に関する基本情報、II学生に関する情報、III教育支援に関する情報、IV管理運営に関する情報)と、大学の経営に対し責任ある立場にある当事者がどのように自己評価しているのかを把握する第二部という二部構成によって、大学経営に関する様々な情報を網羅的に収集したため、回収率(26.4%)が想定したものより低かった。そのため、効率性評価の対象とする大学の絞り込みを行わず、すべての回答大学を対象とした分析を行うこととした。 そして、平成25年度は米国への資料収集及びヒアリング調査等を行う前に、まずはアンケート調査によるデータから日本の大学経営の現状を詳しく分析することに注力した。分析方法は、効率性評価についてはDEAを用い、因果関係については重回帰分析及びAMOSを用いた。大学経営における様々な事象を多角的に捉えることによって大学経営の全体像を把握するため、分析にあたっての共通の視点は効率性とし、研究メンバーそれぞれが異なる対象の分析を行った。具体的には、組織構造、ガバナンス、就職支援活動等である。 これらの分析によって興味深い結果を得ることができ、次年度の研究活動の基盤を固めることができたため、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、当初計画通り、大学の外部環境要因(補助金制度、認証評価制度)と個別大学の経営の効率性との関係を考察する。 また、平成25年度は平成24年度のアンケート回答大学から30から50校を抽出して調査を実施する計画であった。しかし、こうした場合にはサンプル数が少なくなり分析の精度が低くなる可能性があると判断したため実施せず、平成26年度に調査の対象を日本の国公私立大学すべてに拡大して実施し、パネル分析を行うためのデータ収集を行う。 次に、パネルデータを用いて効率性や生産性変化と大学の内部環境であるガバナンス・マネジメントとの因果関係に関する分析を行う。評価手法はDEA、Malmquist生産性指数及びAMOS、BSC等を用いる。同時に、大学のガバナンスに関する課題をアンケート調査から抽出し、その具体的な解決策について実証的研究を行う。方法は、主として大学の実質的な経営者(理事長・学長等)へのヒアリング調査によって行う。その他の調査としては、IRや評価関係機関へのヒアリング調査(米国含む)、研究会を行う予定である。米国での資料収集及びヒアリング調査については、平成25年度実施予定であったが、平成26年度に行う。 最終年度となる平成26年度は、データ分析や研究会でのディスカッションを通して得られた研究成果を学術誌等で積極的に公表していく。また、大学経営のガバナンス改革は文部科学省等が推進している高等教育政策や公益財団法人経済同友会をはじめとする経済界と密接な関わりがあるため、高等教育政策や労働政策分野の研究者、関係省庁の政策担当者等との意見交換も行い、本研究の成果を取りまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた理由は次の2点である。第一は、米国に資料収集及びヒアリング調査にいく予定であったが、日本の大学経営の状況分析を優先し、実施しなかったため、旅費を使用しなかったことである。 二つは、アンケート調査に伴う郵送費やデータ入力委託費を執行しなかったことである。当初は、平成24年度に実施した第1回目の回答校から対象を絞り込んで第2回目のアンケート調査を実施する予定であった。しかし、アンケートの回収が735校中194校(回収率26.4%)と想定より低かったため、連続してのアンケートを取りやめたため、計画どおりの研究費使用とはならなかった。 平成26年度の使用計画は、次のとおりである。アンケート調査については、アンケート配付及び回収、データ入力等のための人件費、委託手数料、印刷費、郵送費を使用する。資料収集及びヒアリング調査に伴う諸経費としては、旅費(国内、国外[米国])と本研究に関する専門知識提供者に対する謝金を使用する。また、研究成果を発表するための学会等への参加費や旅費、資料収集のための旅費を使用する。
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