研究実績の概要 |
本年度は滋賀県大津市の協力のもと、大津市内の小中学校における悉皆調査を実施した。滋賀県におけるサンプル数は小学校36校18,839名、中学校18校8,759名であった。アンケート調査からは同一中学校区においてもネットいじめの発生率が高い小学校と低い小学校が混在しており、それらの学校の児童が中学校に進学した場合、必ずしも発生率はその中間を示すことなく、むしろ発生率がより高くなってしまう学校が16校中7校存在し、一方で小学校ではあまりネットいじめの発生率が高くない小学校の子どもたちが中学校に進学した時に、突如発生率が高くなる学校も5校存在した。 これらの結果により、ネットいじめの発生の分類として、一般的に想定されるようなものよりも、セリンが指摘する「文化葛藤理論」に依拠する形の発生率、すなわちネットいじめの発生率の高さが極端に異なる学校が同一中学校になった場合に、発生率が総じて高くなるという結果を得ることができた。 また、中学校においては3年間啓発活動を行ったA中学校のネットいじめに関する意識の変化をパネル化し、啓発効果についての検討を行った。検討の結果、ネットいじめに対する啓発の効果は所有の有無やアプリの使用時間に直接的な効果を持たなかった一方で、友人関係や親子関係を見直し、改善する傾向が認められた。「友人に悩みを相談する」「困ったことがあれば面と向かって話をする」「学校の出来事を保護者に話す」といった項目で「そう思う」と答える生徒が増えていることが明らかとなった。啓発では、3年間のデータに沿って内容を学校の実態に即したものにしており、それらが高い効果をもたらしたのではないかと考えられる。
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