日本において社会保障費は毎年1兆円づつ増加し、公的債務もGDP比200%を超え、OECD諸国の中で最悪となっている。このような公財政状況の中で、国立大学への運営費交付金、私立大学への経常費補助金、等の基盤経費および科学研究費、その他プロジェクト経費、等の競争的資金の増加は期待できない。 公財政支出が停滞する中で、アメリカやイギリスの公立大学は、大学教育の質の確保をするためにとった処置は、受益者負担主義による、学生納付金の値上げである。本研究は、日本でも大学教育の質の保証をするために、公的支出の停滞をカバーする目的で、授業料が値上げされるかという問題を本研究は検討した。 そのため国立大学学長、財務担当理事、監事に対して、国立大学の財務、自大学の授業料水準についての考え方をアンケート調査によって、明らかにした。それによると、大学管理者の多くは、国立大学のミッションが安価な授業料による良質な大学教育の提供であることを認めており、自大学の授業料を簡単に値上げできないことが表明された。 このことは、国立大学の使命が大学管理者によって認識され、達成されていることを示すものである。しかし一方で、国立大学の財務において、常勤教職員が減少する反面、非常勤教職員が増加し、常勤教職員の業務負担が増加し、それによって研究面での業績に影響が出ていることも指摘されている。財務状況が苦しい中、教育の質および研究の業績にネガティブな影響が出ていることが、明らかにされた。
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