本研究の目的は、国(及び大学)によって学士課程教育の外的内的要件が異なる状況下で、学士学位の国際的な相互認証を可能にする条件を明らかにすることにある。平成26年度には文献研究を進めるとともにドイツで調査を行い、大学における学士の学位(Bachelor)と学士課程の導入の現況、学修要件、学士課程教育に関わる諸問題について、関係機関(ドイツ大学学長会議、ドイツ高等教育・学術研究センター、各州常設文部大臣会議)と大学(カッセル大学、ダルムシュタット工科大学)を訪問して情報・資料を得るとともに、関係者と意見交換を行なった。また、中等教育と高等教育の接続に関する近年の動向、国を越えて高等教育機関間を移動する学生の学位と学修の相互認証についても情報を収集し、関係者(ドイツ国際教育研究所、各州常設文部大臣会議)と討議した。 学生の国内外における移動を促進・支援するには、取得学位、大学・高等教育機関での学修履歴、大学進学資格等に対する適正な認証(recognition)が不可欠である。欧米諸国においては、他国の多様な教育制度を尊重しながら自国の学位・教育資格との比較可能性、互換性の観点から学修履歴の認証が行なわれている。大学をはじめとする受入れ機関が評価し認証することを基本とする一方で、国が指定する助言・情報提供機関(国内情報センター National Information Centre)がその実践を支えている。加えて、異なる教育制度間の比較可能性をふまえて学位・学修履歴の相互認証を行なうために、各国において教育段階ごとに修了者すなわち学位・教育資格の取得者が身につける知識、能力、技術を記述した資格枠組み(National Qualifications Framework)の重要性が高まっている。
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