本研究の目的は、小・中学校の体系的な視点から見た算数的・数学的活動を通した授業の効果を明らかにするとともに、その評価方法の開発を試みることであった。岩手、東京・神奈川、北海道の3地区の小・中学校の教員73名による、3年間での173事例の授業研究ならびに調査研究を行い、以下の知見を得た。 体系的な視点から見た算数的・数学的活動を通した授業の効果については、①算数的・数学的活動を通した授業は、すべての学年、領域で実施することができること、②授業者は、算数的・数学的活動を通した授業に目的(ねらい)を持っていること、③「子ども自らが、数学的な性質や関係を見いだし、伝え合う」といった算数的・数学的活動は、授業者の多くが取り入れていること、④1単位時間の授業の中で取り入れられる算数的・数学的活動は、必ずしも一つではないこと、⑤授業者は、算数的・数学的活動は、平時の授業でも取り入れることができると感じていること。ただし、そのための指導の工夫が必要であるとも感じていること、⑥「式と図などを関連付けたり、式や図などの表す意味を読み取ったりする活動」、「多様な方法や手順を考える活動」、「数や図形などの性質や関係などを発展し、統合する活動」、「式や図、グラフなどを基に、数学的に判断する活動」なども、大切な算数的・数学的活動であること、⑦算数的・数学的活動を通した授業では、教師の介入も必要であること、⑧算数的・数学的活動を通した授業では、算数・数学の学習内容の意味や必要性を理解し、実感した子どもが多かったと感じていること、⑨算数的・数学的活動の内容は、算数・数学の学習内容に即していること、が明らかになった。 また、評価方法については、①小・中連携した算数的・数学的活動の在り方を意識することが大切であること、②授業者は、算数的・数学的活動を通した授業の評価の難しさを感じていること、が明らかになった。
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