研究課題/領域番号 |
24531103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
神野 真吾 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90431733)
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研究分担者 |
岩田 美保 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00334160)
加藤 修 千葉大学, 教育学部, 教授 (20302515)
伊藤 葉子 千葉大学, 教育学部, 教授 (30282437)
山本 純ノ介 千葉大学, 教育学部, 教授 (30302516)
中山 節子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (50396264)
貞廣 斎子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (80361400)
本多 佐保美 千葉大学, 教育学部, 教授 (90272294)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 芸術教育 / ESD / 感性 / 家庭科 / 美術科 / 音楽科 / 図画工作科 / オルタナティブ |
研究概要 |
本研究では、我々が地球という限られた空間のなかで、共に豊かに生きていく上で最も重要なキーワードの一つである「持続的発展」のための教育(ESD)を感性教育の側面から考えていこうとするもの。 今年度は、大きく二つの目標を設定した。一つは小学校・中学校において感性に働きかける「ESD」という観点に立って、実際に授業実践を行い、生徒たちの変化を測定するというもの。これは千葉大学教育学部附属小学校・中学校において、家庭科、音楽、美術の教員がそれぞれの教科の中から、感性に働きかけ、ESDへとつながる要素を抽出し、授業を構成することで取り組んだ。もう一つの目標は、こうした構成された授業を実施した際に児童・生徒に与えた影響、変化を測定する指標を構築することと基礎的なデータ収集。ここで構築した指標をもとにして、授業実践の評価を行うことに取り組んだ。 今年度の成果としては、各教科の感性の捉え方と、その育成の方法が異なる部分と共通する部分の確認ができたことと、感性教育の数値的評価の指標の基本的枠組みを設定できたことである。課題としては、三教科が組み合わせられることでの相乗効果という点では、より一層の精査が求められるということ。それぞれの教科的特性と感性の評価指標のどの部分に対応関係があるのかなどを明らかにする必要があり、調査の手法、指標の再検討も必要になる部分もある。 芸術教育によるES研究は、感性を育成することが、狭い意味での芸術教育の範囲に留まるものではなく、日常生活への態度・行動へと影響を与える汎用的で重要なものであるということを立証することにもなり、普通教育での芸術教育の新たな定義づけにおいて重要な役割を果たすことになるだろうことが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育学部の各専門分野の教員が講師となり、教科を超えて一つのねらいを持って授業を進めていくこと自体が大きな挑戦であると言えるが、その点については順調に進めることができた。神野真吾が全体の総括をしつつ、感性教育が子どもの現代的学びとしてどのような意味を持つのか、その枠組みを設定し、小学校と中学校で授業実践に取り組んだ。中山節子、伊藤葉子は、家庭科教育におけるESDの位置づけ、その内容についての研究を進めつつ、本研究での感性的学びをその中から抽出し、理論化した上で、実践に取り組み、小学校、中学校での授業実践を担当した。本多佐保美と山本純之介は、音楽教育の中から専門的音楽教育を超えて意味を持ちうる要素を作曲行為の中から抽出し、授業内容として構築し、小中学校で実際に授業を行った。その成果として、児童・生徒にとって、日常の学習では得ることのできない学びにつながっていることが確認できた。 また、感性を育てる上での個の変容についての実証的な研究の基盤(評価指標)に岩田美保、伊藤葉子が取り組み、試案的指標の構築ができ、それに基づいたある程度のデータ収集ができた。また、貞廣斎子は、こうした取り組みの学校教育制度全体の中での意義づけについて評価し、実践における助言を行った。加藤修は美術のコミュニケーション的性質を活かしたワークショップの立案、実施に努めた。 全体としてバランスの取れた研究推進を実現できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「感性にはたらきかけるESD]の可能性を、以下の三つのプログラムで検証していく計画である。 ①授業のかたちでの探究(2012年度):千葉大学教育学部附属小学校・中学校において、授業を実践し、その効果を測定する。その効果測定についての指標の検討も併せて行い、従来検証がされてこなかった、感性教育の評価についても取り組む。 ②初年度の活動をとりまとめた報告書を、昨年度の残予算を用いて印刷し、情報を発信する。初年度の成果および視点について、研修を通じ教員へ紹介する(2013年度):千葉大学教育学部が開講する「教員免許更新講習」の一つの講座として、本研究の内容を反映した授業提供する。感性教育の可能性や、それが子どもたちのどの部分を変えていくのか、体験的内容を交えながら現職教員に伝えることを目指す。 ③それらを踏まえた課題検討、成果報告のための開かれた議論の場の設定(2014年度):それまでの成果を報告し、課題について検討する場を設け、広く研究の内容・成果を発信することを目指す。併せて地域における市民向けのワークショップも開催することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度の活動を分かりやすくまとめた報告書を、当該年度内にとりまとめることを目指していたが、その内容の整理や評価について時間が足りず、2013年度初めに発行することとした。これを関係各所に配布し情報発信すると共に、講習などでの資料としても活用する。 2013年度は、教員向けの講習を実施し、教員の意識や、教育実践後の意識の変化などの定量的評価と、その検討を行う計画。そのために必要な消耗品の購入、瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレなど、地域の仲にアート(芸術)の機能を活かした取り組みの調査や、教育活動の余地についても検討する。 また、本事業では、持続的発展のための創造的人材(アーティスト、デザイナーなど)の教育現場への活用の可能性についても検討するため、そうした人材の持つ能力、情報のリソースを活かす教育方法の検討も行う。講師として教育プログラムに関わってもらう際の人件費にも充てる。
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