本年度は次の3つの視点に立って研究を行った。①大洋州圏に設置されているシドニー日本人学校とアジア圏に設置されている上海日本人学校及び北京日本人学校の実地踏査を行い、家庭科教育の現状を明らかにした。②日本人学校で学ぶ児童生徒の家庭生活や家庭科学習に関する意識調査を行った。③日本人学校の家庭科を指導している教師を対象に、家庭科教育の現状や消費者教育の取り組み状況についての調査を実施した。 その結果、次のような知見を得た。 ①シドニー日本人学校や上海日本人学校の家庭科に関する施設・設備は、ほぼ充足していた。また、家庭科の授業を参観したところ、現地理解教育を導入するなど指導の工夫が垣間見られた。②児童生徒の家庭生活の現状は、滞在国により特質がみられた。たとえば、シドニーに在住している児童生徒は、住生活や家族の連携について満足感が高い傾向がみられた。また、家庭科学習へ取り組む意欲も高く、調理実習への興味・関心の高さが表明された。③日本人学校における家庭科担当教師の配置や学校規模による施設・設備の充足度に依然として問題が顕在化していた。特に、施設・設備が十分完備している学校もあるが、未整備の学校との差が大きいことが判明した。さらに、家庭科指導では実習や講義はもとより、家庭実践などを工夫している現状が明らかになった。 以上のことから、児童生徒が海外生活経験を家庭科学習に反映させていくことは、多様な生活のあり方や考え方を受け入れることができ有効的であるといえる。さらに、海外生活経験のある児童生徒と、国内在住の児童生徒がともに学びながら、多様な考えや生活のあり方を共有できることは、有用であることを確信した。
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