本研究の目的は、倉澤栄吉の指導のもとで特色ある語彙教育に取り組んだ東京都青年国語研究会(青国研)による授業実践の成立過程とその特色を、実践史研究という手法で明らかにしようとするものである。この語彙教育の一連の実践は「語い指導」と呼ばれ、昭和49年度から20年間にわたって継続して取り組まれたが、当該年度においては研究のまとめとして、特に次の2つの点を対象として研究を行った。 1.昭和56年度から昭和59年度までの4年間における「語い指導の発想による文字指導-漢字指導を中心に-」を対象に、その取り組みの理念と授業の実際を明らかにした。学習者と漢字との出会いのありように目を向けるところから始まる漢字学習の実践の特色が明らかとなった 2.昭和60年頃から倉澤によって提唱された「語い指導的教育方法」という文言に着目し、青国研による語彙教育実践全体の特色を考察し直した。それにより、コンピテンシーベースの今後の国語教育実践に対する示唆性を明らかにした。
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