本研究は,教員養成教育において重視すべき実践的指導力を抽出するために,教師としての成長を授業実践に関わる力量形成の視点から把握する実証的方法論の構築を目的として進めた。具体的には,①授業実践の質に影響を及ぼす教材や教授方略などの良否のちがいを把握する方法に関する先行研究を収集・分析,②大学3年次教育実習を保持している学生が卒業後6~8年後に勤務校で行う授業データの収集・分析(実証的追跡研究),③異なる熟達ステージに属する学生・教員による共通教材を用いた授業実践データの収集と比較(実証的比較研究)を行った。 平成24年度から26年度に観察した授業実践は,追跡対象として4人(授業時間4時間)比較対象として,11人(授業時間28時間)であった。収集した授業実践データの分析を元に,追跡研究としては,一人の授業者の授業がどのように変容するのか,比較研究としては,一つの授業(教材)が,授業者によりどのように異なるのかの視点から,変容や違いの抽出を試み,得られた知見については,論文等にまとめてきた。平成26年度までにまとめた研究成果は,口頭発表6件,論文6件(うち査読付き5件),報告書3件であった。 最終年度である平成27年度は,収集データの分析を進め口頭発表を行った。教師としての成長をとらえる視点は多様であり,収集データの分析に多くの時間がかかり,教師としての成長を授業実践に関わる力量形成の視点から把握する実証的方法論を提案するには至っていない。しかし,その基盤となる教員養成段階における授業実践力の育成要件や要件を組み入れることによる養成プログラムの効果については,本研究の基盤となっている研究(基盤研究(C)課題番号19530790)の成果とともにまとめ単著として刊行した。
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