研究課題/領域番号 |
24531110
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 武夫 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50324174)
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キーワード | 推論発問 / 読解指導 / 英語で行う英語授業 |
研究概要 |
英語読解指導において、生徒の読みを深め、読み取ったことを豊かに表現させるために、推論発問を中心としながら異なるタイプの発問をいかに効果的に連携させるべきか具体的な指導方略を提案することを目的に、平成25年度は、次の2点について研究を進めた。 1. 英語読解における推論と学習者要因の関係について、先行研究から得られる知見を概観し、効果的な推論発問の活用のヒントを整理した。とくに、学習者の言語能力、学習者の作業記憶の容量、学習者の背景知識、学習者の目的意識、学習者の興味関心といった推論に影響を与える学習者要因を中心に推論発問の活用のためのヒントを探った。その結果、読解指導において教師が推論発問を効果的に活用していくためには、深いテキスト理解を促すための足場掛けとして推論発問を使うと同時に、生徒のつまずきをその場で瞬時に判断したり予測したりしながら、推論発問に答えるための足場掛けとして生徒にとって最適なヒント情報や補助的な発問を与えることが求められることを明らかにした。 2. 英語の読解指導において、事実発問・推論発問・評価発問といった異なるタイプの発問を活用し、生徒の思考や表現を促すことで、テキスト理解を効率よく導くことができることを、中学校の英語の教科書に掲載されているテキストをもとに発問づくりの原理原則と発問の具体例を提案した。また、昨今の英語教育で求められている「英語で行う英語授業」を行うことが、教師の発問を中心と据えることによって可能であることを、実際のテキストを例にして、英語による教師の発問とその発問を中心とした教師と生徒のやりとりの具体案を提示し、その際の指導方策について提案した。 以上、読解指導における推論発問を活用することによって、どのように生徒のテキスト理解と豊かな表現を引き出すことができるかその方策について研究論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究目的は、読解指導における推論発問と評価発問の連携が読解後の生徒の表現内容等にどのような効果が得られるのかをみることにあり、研究計画としては、次の2点を進める予定であった。 1. 推論発問と評価発問の連携効果に関する量的調査。テキスト情報を正確な読みを促すと同時に生徒の背景知識を活性化するという推論発問の特徴を生かし、テキスト内容に対する生徒の意見や考えを述べさせる評価発問(あなたは~についてどう思うか?)を連携させて指導を行うことで、生徒のより深い思考を促し、読解後における意見や考えを表現させる活動で、より豊かな表現を促すことができるものと仮定する。そこで、事実発問のみを使って読解指導、事実発問と推論発問の両方を行った指導、そして、事実発問、推論発問、評価発問を活用した読解指導の3つの指導群において、読解後の生徒の表現量を比較分析し、読解後の表現に対する推論発問と評価発問の連携の有効性について明らかにする。 2. 推論発問と評価発問の連携効果に関する質的調査。推論発問と評価発問の連携効果が読解後の表現内容に与える効果について、質的にも分析を行う。とくに、表現内容の豊かさについて、表現内容のテキスト主題との関連度、生徒の背景知識との関連度、などといった指標から分析を行う。これらの結果から、読解後の表現に対する推論発問と評価発問の連携の有効性を明らかにし、読解後の豊かな表現につながる読解指導の具体的方策を明らかにする。 研究計画の1と2に関して、量的および質的調査を行う予定であったが、英語読解における推論と学習者要因の関係についての先行研究から得られる知見を概観し,効果的な推論発問の活用のヒントを整理にするために予定以上の時間がかかったため、研究計画の1と2の調査を実施するまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究目的は、読解指導において推論発問と評価発問を連携させた指導が、読解指導中における教師と生徒とのインタラクションや生徒の発言の特徴、そして、読解後の生徒の表現内容等にどのような影響があるのかをみることにあり、研究計画としては、次の2点を進める予定である。 1. 発問方略による教師と生徒とのインタラクション促進の調査。本研究において明らかになった事実発問、推論発問、評価発問の連携について、教師が英語を用いてこれらの発問を行った場合、どのような教師と生徒間のやりとりを生み出すのかを、高等学校の英語リーディング指導を対象にし、授業を分析する。物語文および説明文等の複数のジャンルのテキストを対象に、本研究で考案した発問方略を応用し、継続的な授業実践を授業協力者に行ってもらう。英語を用いての発問方略を応用した指導での教師と生徒のインタクションを分析するために、授業のビデオ録画、授業後には研究者による授業者への授業中のインタラクションに対するインタビューおよびアンケート調査を行う。 2. 発問方略による生徒の英語使用頻度の調査。調査前後において生徒に対して読解指導中の英語使用頻度の調査を行い、継続的な指導の中で、読解指導における英語使用頻度の変化および、読解に対する態度等に変化が見られるかどうかを調査する。教師の反応および生徒の反応と、発問の質の関係を分析することで、英語使用を促す発問の特徴を明らかにする。これらの結果から、分析結果から考えられる理想的な教師の発問や反応の仕方や、教科書本文を中心としたコミュニケーション活動づくりの可能性など、英語を使った英語授業の具体案を提案する。 研究計画の1と2が終わった段階で、英語リーディング指導における推論発問と評価発問の連携の有効性およびその活用方策を英語教育学会にて口頭発表、および、研究論文として発表する。
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