現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,戦前にあった高等女学校の教育内容を分析することによって,男女の教育内容の差異を明確にし,その構造と差異の要因を明らかにすることであることであった。「研究実績の概要」でも述べたが、教科書データの収集はそれほどすすまなかったが、その分析は少しずつ行われている。つまり、研究課題が、量的には進んでいないが、質的には進捗が見られるということである。今あるだけでのデータ分析では誤解をまねく恐れがあるため断定はできないが、高等女学校における地理教育と中学校におけるそれの差異は質的な面でもみられると思われる。こうした教科書にみられる性差がうまれた理由の検討は今後の課題である。 また、当初の研究予定になかった終戦直前の中学校地理教科書の内容分析がなされたことには意義がある。その内容は、中学校の国定地理科教科書の内容に見られる国策遂行に関わる記述の特徴を類型化したことである。その傾向は、地理科という教科の特性上、あからさまな軍国主義や国家神道についての記述は少ないが、国家主義的な記述はみられた。具体的には、体制翼賛的な記述ばかりとはいえないものの、国土の美しさを讃え、民族の優秀さを訴え、同盟国については友好的な記述はみられたのである。たしかに地理科教科書には客観的知識が教科書にはみられるが、時代状況の影響を少なからず受けているところがあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初の予定通り、遂行する予定である。 1 他教科の教育史研究の検討:地理科教育の史的変遷のみならず,他教科においてど のように研究がなされているのかの知見を深めるために,教育史学会誌『日本の教育史学』,日本教育史学会誌 『日本教育史研究』等の文献資料を収集し、比較考察する。地理科教育を他教科との関係からとらえることで,教育の中の地理科の位置づけを究明するためである。 2 高等女学校の地理科教科書の収集と分析:上記の計画,とりわけ1資料購入と2資料収集に おいては,申請者本人が足を使い,現物を見,その資料について,判断しなければならず、おそらく長期に及ぶ ものと考えられる。愛知県刈谷市(大学所在地)から東京までの,申請者の交通費等を計上する。たしかに,愛知 教育大学にも古い教科書はあるが決して十分ではなく,多くの古書が集まる東京においてその資料を収集する必 要がある。この収集こそが本研究を支える最も基本的な前提であるといえる。 3 統計処理手法の習熟およびデータ処理:統計処理について習熟する予定である。
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