研究課題/領域番号 |
24531119
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
寺田 守 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (00381020)
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キーワード | 国語科教育 / 読むことの学習 / 一文読み / 読者反応理論 / ブッククラブ / リテラチャーサークル / 文学 |
研究概要 |
平成25年度は解釈法の開発と読解力向上効果の検証とともに読解力向上のためのカリキュラムを検討した。 まず話者の判断や評価の表れる言葉に着目することで登場人物の言動を理解する方法について,中学生,高校生,教師へのアンケート調査によって効果を検討した。調査からは「走れメロス」(太宰治)の読者が特定の一文に集中して関心を寄せることが分かった。同時に集団の中の約半数の読者が他の読者の選ばない文に注目するという分散の傾向も指摘できた。話者の判断や評価を表す言葉は,述語の終助詞,助動詞,副助詞,副詞に顕著に表れる。読者の関心が集中する一文を理解するために,話者の判断や評価を表す言葉に注目することが有効であることを明らかにした。 次に京都市立上鳥羽小学校4年生に行った「世界一美しいぼくの村」(小林豊)の授業の分析を行い,話し合い記録の考察を行った。書かれてあることを書かれてある通りに理解することは教師の介在しない話し合いでは学習者にとって難しい挑戦となる。動作を表す言葉に着目して,人物の動きを考えることで,言語化できない登場人物の心情を実感的に理解できるようになるとともに,教師の介在しない学習者同士の話し合いの中で理解を深めることができることが分かった。 さらに読解力向上のためのカリキュラムを検討するために,京都教育大学附属桃山中学校2年生に行った「タオル」(重松清)の授業を分析した。学習記録と話し合い記録の評価および学習者の自己評価を分析し,話者の判断や評価の表れる言葉に注目し一文を読む活動が中学2年生段階で有効な方法であることがわかった。その上で「行動描写に着目する方法」「情景描写に着目する方法」「話者の判断の表れた言葉に着目する方法」「会話の含みに着目する方法」「語り手の判断の表れた言葉に着目する方法」の5種類の読み方を検討し,登場人物の気持ちを理解する方法の系統図を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,国語科「読むこと」の学習において,一文の意味を考えるという解釈法と小集団討議という学習活動とを用いた指導法を開発し,その読解力向上効果について検証することである。 計画では,平成25年度は,①小集団による読書プログラムの検討,②読解力向上効果の検証を行うとともに,③成果の公表を行う予定であった。本年度は,①②とも計画通りの進捗であり,あわせて③についても学会発表や論文の執筆によって成果を公表することができた。 ①については,前年度の文献調査やインタビュー調査を踏まえ,読解力向上のためのカリキュラムを作成した。あわせてカリキュラムの妥当性を検証するために,実験的に授業を行い,記録や学習者の自己評価を検討した。 ②については,前年度に行った二つの実験的な授業の話し合い記録を詳細に分析するとともに,中学生,高校生,教師に実施したアンケート調査の結果を分析することによって,開発した解釈法の有効性を検討した。 ③については,研究成果を論文と学会発表によって公表した。とくに作成したカリキュラムについては,学会の課題研究に指定され,パネルディスカッションの形で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,最終年度であるので,①一文を読む解釈法の開発,②小集団による読書プログラムの検討,③読解力向上効果の検証を引き続き行いながら,④成果の公表に重点を置いて研究を推進していく。①②については,前年度に引き続き,実践・研究論文を検討することで,小集団による読書プログラムの意義と課題を解明する。③については,研究協力校において授業を実施し,記録を検証する。小集団で一文を読む学習活動が,読解力向上にどのような役割を果たすのかを検証する。④については,学会において口頭発表を行うとともに,成果を論文として公表する。
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