研究課題/領域番号 |
24531120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
峯 明秀 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10379323)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 授業研究 / 授業改善 / PDCA / 教員の専門性 |
研究概要 |
平成24年度は、個・集団としての教員が日常の教育活動の中で、授業改善をどのように推し進めようとしているのかに焦点をあて、学校現場で何をどのように改善しようとしているのかについて、事例収集を行った。具体的には、香川県の全中学校教員から組織される研究会に焦点を当て、2012年度全国中学校社会科教育研究大会(香川大会11.19-20)に向けての研究に対するアクションリサーチを行った。研究部や授業者の問題関心に寄り添いながら改善の促進者(プロンプター)として一定期間の活動状況を把握しつつ、適宜、助言を加えた。状況に応じたアクションを加え、社会科の授業改善におけるPDCAサイクルをどのように確立しようとしているのか、何がどのように変化したのかを当事者の振り返りと観察者の分析によって抽出した。 研究成果として、第61回全国社会科教育学会(岐阜大学10.21)において、研究推進の中心となった研究主任、公開授業者、研究組織の長と共同研究発表を行った。主題を「社会科授業におけるPDCAサイクル構築の実証的研究」として、II学校現場において「研究する」とはどういうことか、III中学校現場における研究会の取組が自分自身の授業をどのように変えたか、IV研究団体『香中社』による授業改善への取り組みの事実と省察の3つである。(Iは、社会系教科教育学会第23回研究発表大会2012.2で発表「教員集団による『授業改善』の事実と課題」) 定型化され,実効性をもたない学校現場の授業研究への警鐘,授業者の日常に寄り添い,自らの実践を省察する構えや手法の提示,学校や教師を支え,授業研究を推進できる組織やシステム構築の必要性を示すことができた。 また、本事例研究をもとに教科における授業研究をどのように進めるかについて、社会系教科教育学会第24回研究発表大会シンポジウムにおいて提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 香中社の教員集団における授業研究の変化 香中社で行われてきた授業研究は,当初,学校現場において従来から行われてきたように日常の実践課題に焦点をあてつつ,学習指導要領などに示される教育行政の動きや教育学界から発信される研究理論を取り入れながら、あるべき教育内容や方法について,教材開発や指導法の開発を目指すものであった。しかしながら、進められてきた授業評価・分析,授業改善への研究に影響を与えるものになった。例えば,「社会科授業力診断カルテ」「社会科授業力ハンドブック」「授業評価・分析のシステム化」などに表れている。これらは授業力・実践力や社会科教師の専門性の研究を反映したものである。 2 研究推進リーダーの振り返り 研究推進の中心的な役割を果たした教諭へのアンケート結果からは、先輩教員や同僚との議論や話し合いを通して,研究テーマを設定し,教材内容の開発や指導方法についての仮説を立て,研究授業を実施し,その結果を評価,検証するという仮説検証アプローチを採っていた。それは従来から見られる諸能力育成の成果を実験授業によって検証すると授業研究であった。研究の方向性が変わる外在的な要因として、筆者の意図的な示唆が少なからず影響している。但し、多様な社会科教育学研究の内容や方法を紹介される中から、授業評価・分析や授業改善研究を取り入れ、研究提案が構成されたことは研究推進の実践者集団が自らの経験に照らし、学校現場における状況に応じた授業研究のあり方を取捨選択し、アプロプロエ-ションしたものといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果と課題をもとに、さらなる協働の授業力向上のシステム化を図る。とくに、授業力は個々の教員や教員集団における継続的な研修や研究活動によって高まる。次のA~Cのそれぞれの研究対象に対するアクションを加え,PDCAのあり方を分析する。 A 教員間での研究・研修組織が確立しておらず、個々の教員が日々の実践の中で抱く課題を共有し合い、その解決に向けての支援を行っている。小グループでの省察のあり方に焦点をあてる。 B 社会科教員からなる研究会を核とした教員間の協働組織において、授業力向上のマネジメントサイクルがどのようなものかを分析する。教育委員会や関係諸機関と研究者などとの連携を図ることを可能にする授業研究のシステム化に焦点をあてる。 C 個々の教員の学びによる授業力向上の検証を進める。社会科における授業観の異なる授業理論・モデルとなる授業を被験者となる院生・学部学生に提示し、また、実践の観察の積み重ねがどのように、授業向上力に影響するのか。現在の指導学生から卒業後、数年の経験を重ねてきている教員に対する継続的な支援を行い、聞き取り調査を行う。授業者が自己の授業の課題を明確にとらえ、それを解決するための内容・方法について、実践を通して省察する個人のPDCAサイクルに焦点をあてる。
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次年度の研究費の使用計画 |
① 教員が置かれた状況に応じ、柔軟で継続的な授業改善を図る中で、授業者が目指す授業観に沿ったPDCAを繰り返すことを目的とする。学習者に期待する学力や資質形成を自覚し、各々の授業観における評価指標は何かを抽出する。研究協力者及び協力校では、どのような授業観をもち、学習者の実態に応じて授業PDCAを図ろうとしているのかを協力者の学校を訪問し調査する。また、授業者は日常の授業において無理のない改善の手立てを創出する。各手立てによって、学習者がどのように変容するのか、期待される学力をどのような評価指標によって見出すのかを分析する。 ② 授業検討会では、実践経過を学習者の成果物やVTRをもとに報告する。具体的な事実をもとに評価分析を摺り合わせ、共有する。学習者にどのような学力や資質・能力が身に付けられたか、事実をめぐるどのような話し合いが行われているのか、データとしてのVTRの文字起こしに人件費としての謝金を要する。 ③ 公開授業を通して、成果と課題を検証する。授業者の意図がどこにあるのか明示した上で、授業観察および授業後の検討会を行う。核となるリーダ教員以外に、小グループや一人一人の教員が研究と実践を重ねる研究をどのように進めるかを聞き取り、記述する。 ④ 教員の授業力は何か、学習者の実態把握と分析・指導技術・教材解釈・教材開発・授業展開の工夫・学び方の指導・情報の収集・活用等、また、学習規律の確立、学習する雰囲気の醸成、授業開発力、授業構成力、授業展開力など用語の整理と理論の精緻化を図る。研究成果の印刷物を作成する。 ⑤ 国内外の学会に参加し、研究成果を協力者とともに発表する。
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