本研究では、教員自身が日々の実践の中で、授業をどのように省察し、評価・改善を行えばよいか、学校や教員、学習者をとりまく状況に応じた社会科授業力向上のPDCAシステムの構築を図ることを目的とし,次のA~Cのアクションリサーチを試みた。 A.和歌山県海草地区中学校社会科教員からなるグループ20数名への研修支援のアクションリサーチを行った。教員間での研究・研修組織が根付いてきており,個々の教員が日々の実践の中で抱く課題を共有し合い、その解決に向けて小グループで話し合う場面や,研究者との共同研究を行うなどの変容がみられるようになった。 B.香川県下の全中学校社会科教員からなる研究会との共同研究を行った。平成24年度全国中学校社会科研究大会発表に向けて「社会科教員の授業力の向上」をテーマに2年間の研究を進めた結果,授業力を授業開発力・授業展開力・授業技術力としてとらえた研究発表を行った。研究会の中心的な推進者,授業者,研究会長の各々の立場から省察し,全国社会科教育学会において共同発表を行った。 C.個々の教員の学びによる授業力向上の検証を行った。社会科における授業観の異なる授業理論・モデルとなる授業を被験者となる院生・学部学生に提示し、また、実践の観察の積み重ねがどのように、授業向上力に影響するのか。指導学生から卒業後,継続的な研究を進めている新任教員が省察し,全国社会科教育学会において発表した。 教員が抱く切実な課題は様々であり、学習者の変容や成長を促すための授業観や授業構成、授業技術は異なる。個々の教員が柔軟で継続的な授業改善をどのように図るのか、授業研究をどのように行えばよいのかを省察すること、授業力向上のために同僚やグループ・附属学校や教育委員会、研究者らがどのように係わり,協働の研究組織・集団をつくればよいかを協力し合うPDCAシステムの構築が必要である。
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