研究課題/領域番号 |
24531131
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
菅 道子 和歌山大学, 教育学部, 教授 (70314549)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 学校音楽 / 1930年代 / メディア / 音楽文化 / 教育実践 |
研究概要 |
平成24年度には1930~40年代の学校音楽にかかわる諸メディアの状況把握からその特徴を抽出するとともに、教師の教育研究並びに音楽教育実践への影響について分析することを次の2点を課題として研究を進めた。 (1)雑誌メディアと学校音楽教育実践との関わり方を探るために、尋常・高等尋常小学校の教師たちが中心に組織した学校音楽研会の機関誌『学校音楽』(1933(S8)年9月~1941(S16)年月)の雑誌記事、並びに教育音楽の理論家、音楽家を中心に組織された日本教育音楽協会の機関誌『教育音楽』(1922(T11年)12月創刊~1940(S15)年12月)の雑誌記事の収集と内容分析を行い、現場教師、教育音楽の理論家、音楽家など分野の異なる人々がどのような意図をもって音楽教育に関わっていったかを分析視点として1930代の音楽教育実践の実態解明を行うことを課題とした。 これについては、二種の雑誌の資料収集を行いながら、1930年代に特徴的な音感教育の実態を大阪府堺市の佐藤吉五郎視学の指導並びに東京市の金富尋常小学校の酒田冨治訓導の指導、本町尋常小学校の佐々木幸徳訓導の指導の実態を明らかにした。それとともに、1930年代の日本のピアノ演奏、ピアノ教育を推進した音楽家笈田光吉、園田清秀との関係を通して当時の音楽文化と学校音楽との接点を描出している。 (2)放送、SPレコード・映画などの音楽メディアの1930~40年代の現況を把握するためにラジオ年鑑』(日本放送協会1931~1941年)、コロムビア、ビクターレコードなど各レコード会社の『レコード目録』等の収集分析を行うことを課題とした。 これについては収集を進めている。またレコードや楽器の生産・販売状況、コンサートの実施状況等については、文化史研究、経済史などの知見を取り入れながら把握し、学校音楽との接点を洗い出すことが継続課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1930年代から1940年代にかけてのメディアの発達により変転した音楽文化の大衆化が、学校音楽文化の形成に何をもたらしたのか、またそれらは教育の担い手となる教師、また子どもたちの相互作用の中でいかに受容され、さらに新しい文化として発信・創出されていったのか、そのプロセスと特質を明らかにすることを目的とするものである。上記の目的を検証するために設定した課題4点のうち、H24年度は下記1.2.の具体的課題を設定した。 1.1930~40年代の学校音楽にかかわる雑誌・音楽メディア等の状況把握と教師の教育研究や学校音楽文化への影響について把握すること。 2.1930~40年代にかけて特徴的な音楽科の指導内容の内実を把握すること。 このうち1.については雑誌『学校音楽』『教育音楽』については収集・データ化を進めつつ、2.については、特徴的な音楽科の指導内容として音感教育をとりあげ実態解明を行っている。また音楽文化との関係として音感教育とピアノ演奏との関係を重視した当時の音楽家たちとの接点、また国防という観点から接近してきた軍部との関係についても調査を進めているところであり、おおむね研究目的の達成に向けてH24年度の課題は達成していると考える。 一方、雑誌以外のメディアとしてレコード等の文献・音源資料を収集しているが、これらはH25年度に向けてさらに資料収集とデータ化、分析を進めることが課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、研究全体の課題4点のうち、2.3.4.について実施する予定である。 2.1930~40年代にかけて特徴的な音楽科の指導内容の内実を把握すること。これについては、新たに大分県、鳥取において特徴的な音感教育実践がなされていたことが調査のなかで判明したため、これらの実態解明と他の実践とを比較することである。また東京中心に誕生した簡易楽器指導の実態と全国への普及、また大衆音楽文化との関連についての解明は継続して作業をしていく。 3.1930~40年代にかけて特徴的な教科外活動における音楽活動の実態を把握すること。これについては、特に1930年代半ばになると報国週間たるものが設定され、音楽文化、教育活動が国家統制の道具として使われており、その中でブラスバンドや喇叭鼓隊といった教育活動がどのように展開していったのかその実態解明とともに、当時の大衆音楽文化との接点とを探っていく。 4.1.で把握したメディアに関連した音楽文化と2.3.で把握した教科内外での音楽活動との関係構造について解明すること。これについては、その分析枠組みを常にもちながら調査分析を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度下記の予定で研究費を使用する。 1)物品費について雑誌、音源、当時の楽器類などの収集、また基本文献の収集のために使用する。 2)旅費については大分県、鳥取、東京などでの音感教育、簡易楽器指導の実態調査のために使用する。また、これらの成果の一部を学会発表する予定である。 3)人件費・謝金については資料のデータ化とインタビューの記録のために使用する。 4)その他、複写、ファイルなどの文具類、オーディオ・パソコン関連の消耗品等、郵送費等に使用する。 尚、H24年度の予算執行では残額が発生した。これはH24年12月に頸椎ヘルニアを発症し、4ヶ月ほど治療と療養を必要とし、調査出張等できなかったためである。これらについてはH25年度の研究費の使用計画の中で再度計画し、執行する予定である。
|