研究課題/領域番号 |
24531134
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴 静子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90141770)
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キーワード | 家庭基礎 / 技術・家庭科 / 実物衣装 / 輸出用キモノ / 欧米への影響 / 日本の色 / 藍染 / モン族 |
研究概要 |
平成25年度は、「布のちから」・「イメージ表現活動」・「生活文化力」についての考察を深め,この連動した三者を十分に機能させた中・高等学校の家庭科プログラムを授業実践を通して開発することを目的とした。本研究に協力して、プログラムを開発・実践する中・高等学校を、それぞれ広島大学附属東雲中学校、同附属福山高等学校に決定した。実践校の家庭科教師に向けて各種の情報を発信するとともに「布のちからの発見」と「イメージ表現活動」を組み合わせた家庭科学習の具体的な内容と方法および評価について,協力して指導案を作成することにした。中学校段階では,「日本人は何を着てきたか」というテーマのもとで,布と日本人の関わりを通史的に捉えさせ、その後、明治期のキモノの実物に触れさせ、それらが海外に渡った理由について考えさせたり、使用されている日本の色に着目させることを一つの柱とした。続いて、藍染めの実習をさせ、その布と藍色のデニム地を使用して絵本を入れるバッグを製作させ、モン族の保育園に贈るという組み立てにした。授業の前後のアンケートなどからこの授業の高い効果が明らかになった。高等学校では,「家庭基礎」(2単位)において,被服材料,被服整理,着装,被服の消費などを組み込んだ,服飾史を柱とした内容を考えた。精巧な染織・技法をこらして美しさが追求された絹の衣装の実物に触れさせたことは、授業への関心を高めた。明治期に発揮された「絹のちから」を実感させることを通して,「染織の日本」を再発見させることを意図した授業は、生徒の知的興味を増進した。各種調査を通して、この授業の効果が高かったことが明らかになったが、とりわけビデオや展覧会図録を使用して、横浜の絹物商「椎野正兵衛」の物作りの精神について考えさせたことは、生徒にとって意義深かったことが示された。中・高等学校の学習プログラムは順調に開発されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高等学校並びに中学校において、布の力を発見することをテーマとした実験授業を実施し、研究紀要等にまとめることができた。また授業実践を導く理論として、高等学校については、服飾文化史の側面から明治期の輸出用キモノの考察が深まるとともに実物衣装の収集も充実してきた。中学校については、江戸のキモノから日本の色を発見させる、藍に注目させて布を染める、デニム地でバッグを製作するなどの教材開発も十分行うことができた。また、実際にタイにあるモン族の保育園にデニムバッグを贈ることもできた。以上が、おおむね順調に進展していると考える理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究から、高等学校段階においては、キモノが欧米に与えた影響力について、実物衣装を十分に活用すること並びに学習のまとめとして絹を用いた表現活動を行うことが課題とされた。また中学校段階においては、備後絣とカイハラのデニム地を取り上げて、地域の伝統と文化についての理解をより深めさせることが課題とされた。そこで高等学校においては、明治時代に欧米に向けて輸出された実物衣装について、その観察の仕方を指導し、また表現活動としては絹を用いたお守りづくりを取り入れたい。中学校では、備後絣とカイハラ・デニムを用いて、モン族の保育園へ贈るバッグを製作させたい。いずれにしても、本年が研究の最終年であるので、総まとめを行い、授業のモデル化を図りたい。
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