平成26年度は研究の最終年度であり、研究テーマである「布のちからとイメージ表現活動」について、高校段階では明治期の輸出用キモノを取り上げ、また中学校段階ではモン族の子どもに贈る布絵本の製作を柱とした授業開発を行い、実践して評価した。これらの成果は、「日本染織文化の再発見と継承をねらいとした被服学習を支援する内外資料収集と教材開発」、「欧米を魅了した明治のキモノの探究を通して染織文化を未来につなぐ被服学習の開発」、「子どもたちに贈る布絵本の製作を通してグローバルな資質の育成をめざす「技術・家庭」の授業開発」という3つの論文にまとめた。なお口頭発表としては、「染織日本の伝統を文化を学ぶ教材としての明治・大正期の輸出用キモノについて」、「ものづくりの精神を伝える家庭基礎衣生活分野の授業―染織の日本の技を生かした海を渡ったキモノから―」、「生活文化力を培う中学校家庭科授業の創造」という3つを行った。これらが示すように平成26年度は研究が大いに飛躍した。さてここで、全体を通した研究の進展について省察したい。研究目的は「日本各地で継承されている布や外国の意味深い布を収集・理解することを通して,布のもっている力や意味を歴史的・文化的に捉える。これに基づき,小・中・高等学校の家庭科において,『布のちから』を発見すること,布を用いて多彩なイメージ表現活動をすること,これらを通して生活文化力を培うこと,という3つを柱とした学習プログラムを設計・実行・評価し,適用可能なモデルを提案して普及させること」であった。まず、日本と外国の意味深い布については、質、量ともに潤沢に収集し、教材として活用した。次に『布のちから』の発見については、明治期の輸出用キモノとモン族の布を取り上げたことが効果をもたらした。布を用いて表現活動を行わせたことも成功し、中・高校における被服学習プログラムのよき姿が示された。
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