本研究はアジアの国と地域における美術教育の社会的文脈の研究である。調査対象は、台湾、韓国、ベトナム、タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポール、インドネシアとし、中国も参考に調査を行っている。平成26年度までに対象国の実態調査を実施し、教育課程、教科書、教育実践、美術的背景等の資料の収集を行い、暫時、内容のまとめを行ってきた。 平成27年度は台湾、ベトナム、タイ、カンボジア、シンガポール、インドネシアの美術教育の実態調査を再度実施し、社会的な文脈における美術教育の関連を考察した。また、台湾、インドネシアにおいては研究のレビューも行った。台湾では継続して、台北教育大学、東海大学、東華大学において美術教育の現状を調査し、美感教育の内容調査を行った。また、北師美術館、台北市立美術館、台湾美術館において美術運動と美術教育の関係を調査した。さらに台北教育大学附属小学校において「芸術と人文」の学習領域の教材調査を行った。 ベトナムでは小学校と課外教育の美術教育の教育実践を調査するとともに教科書教材の分析を実施している。タイではチュラロンコン大学教育学部において美術教育の教育課程と実態調査を行い、美術館博物館において美術教育の背景を調査した。カンボジアでは教育課程の研究と小中学校での実態調査を行ったが、美術教育としての独立した授業は実施されていないことが明らかになった。社会科の文脈の一部となっている。 シンガポールでは現代美術による美術と美術教育の関係について、国立教育学院と美術館において調査をおこなった。教材における現代美術の割合が高く、それらを通して歴史、社会、民族などの学習を進めていることが明らかになった。インドネシアではジャカルタ州立大学と美術館において調査を行い、伝統文化としての工芸と近代化による美術を含む美術文化の内容研究と東南アジアの美術教育のレビューを行った。
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