本研究は、地域と生活と景色の観察から沿道景観の貢献要素を抽出してキーワードによる分類と分析を行い、レーダーチャートを作成してその集積により継時性の視覚化に取組み、景観形成の意識向上に繋げる。デザイン教育の分野にパブリックデザインという新機軸を導くと同時に、創作に至るコンセプト形成力の深化も目的とした。 平成24年度は松山市における予備調査と文献資料より、沿道景観の貢献要素にあたるキーワードの抽出と分類を試みた。また、画角などの撮影調査に関する問題点の整理と解決策を検討した。平成25年度は本調査の対象街路である福岡県久留米市「山苞の道」の撮影を通して詳細な観察を行い、ワークショップ形式で行ったアンケートの結果から、貢献要素の分析を進め、自然系(眺望・開放感/自然・植栽)とハード・人工系(道路整備/沿道要素)とソフト・感性系(生活/調和・色彩/印象・心地よさ)の3軸と7つのカテゴリーに分類した。レーダーチャートやダイヤグラムなどの作成により視覚化し、継時性への課題を明らかにした。平成26年度は愛媛県内子町大瀬の成留屋地区で同様の調査とデータの視覚化を図り比較検討を行い検証とし、継時性に必要な連続性を高める提案を行った。加えて学生10名が実際に街歩きを行った後に、パブリックデザイン教育のモデル事例に向けて、ワークショップや学習手段の提供となる方法も検討した。これらの結果から提案した貢献要素の汎用型キーワードと分類(里山編)を用いた成果物として、平成27年度はボードゲーム「K冠グランプリ」(A!ボード・景観カード・効果カード・コマなど)を作成した。試作や試行を重ねたプロセスは、創作に至るコンセプト形成力を高める実践となった。さらに、調査地の「柿まつり」に参加し、報告発表としてパネル展示とゲームを開催した。効果と改善点について考察し、広く活用するために、8セットを追加制作した。
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