研究課題/領域番号 |
24531140
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井上 洋一 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90510892)
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キーワード | 音楽科教育 / 音楽デザイン / 創作 / 音楽づくり / ICT活用 / 作曲 |
研究概要 |
本研究は、音楽表現活動のプロセス全体をさす「音楽デザイン」の概念や構想を取り入れ、誰もが音のイメージを具体化し、生活の中に「音の記憶」を根付かせることができる創造的な音楽表現活動の実現を目的とするものである。その一方法として、ICTを活用した音楽学習プログラムの開発と実践を行う。 1年次に創作指導を行うためのICT環境整備として、タブレット型PC(iPad)を生徒用に10台導入し、4人1組でグループ創作を行った。しかし、実際に授業実践を行ってみて、2人ペアや1人ずつの創作が望ましいと思われる場面や内容があったため、2年次は、iPad miniを追加購入した。これにより、本格的な創作学習支援システムの運用のための環境が充実し、学習形態に応じたICT活用の工夫が可能となった。 2年次は附属学校との連携協力体制を強化し、創作学習を中心とした授業実践を継続的に行った。附属中学校の教育実習や附属小学校の研究大会における研究授業で、iPadを用いた実践を公開し、学校関係者から注目された。これらの実践研究の成果は、1年次に行った県立高校での授業実践と合わせて、愛媛大学教育実践総合センター紀要に論文として発表した。また、日本電子キーボード音楽学会全国大会における研究報告・発表は、教育関係者のみならず、楽器メーカーからの多くの賛辞を受け、あらためて、本研究の価値や妥当性を認識することができた。 科研費補助金で購入したiPad等のICT備品は、学校教員や一般の音楽愛好家を招いた公開講座やワークショップを開催した折にも活用しており、研究成果を還元することに役立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年次の計画は、ICT活用のための環境整備・充実を行いながら本格的な創作学習支援システムの運用を図ることであった。これについては、科研補助金で購入したiPadと、大学の備品の共通備品を合わせて、児童・生徒用、一人一台のiPadを用いた授業実践を行うことができ、また、音楽室内の無線LANネットワーク環境が整備できたことにより、ハード面で急速に進展した。また、附属学校の音楽科教員との連携協力体制も確立し、学習指導案の作成やティーチングアシスタントとして大学教員も小学校の授業に参加するなど、ソフト面でも順調に進展していると言える。 しかし、子どもたちの作品、授業の感想等の保管、データベース化、テキストマイニングの手法によって「音の記憶」に関する子どもの反応・変容の分析等行うという授業評価に関する研究については、テキストマイニング手法を用いるためのアンケートやテストの作成にまで着手できていない状況であり、評価研究の方法も含めて見直しが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
3年次も、ICT活用のための環境整備を継続するとともに、さらに、授業実践を積み重ねていく。授業の実施については、附属学校以外の公立学校にも協力をよびかけていく予定である。実践の機会を広げて、アンケート調査のサンプル数も増やし、授業評価や研究の成果を検証する研究にも着手したい。 研究の成果報告としては、研究紀要等への論文の投稿、学会での研究発表を積極的に行うとともに、インターネット上で、児童・生徒作品の発表の場を提供するためのオンラインの作品発表会を実現し、愛媛作曲協議会等の学外文化団体の協力を得ることができれば、オフラインでの作品発表会の実現も検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
授業評価のためにテキスト分析ソフトを購入する予定であったが、市販のテキスト分析ソフトは、主に企業向けのソフトとして販売されており、莫大な価格であることがわかった。そこでフリーのテキスト分析ソフトを試用しているが、分析方法の自由度が少なく、別の手法による統計分析ソフトに切り替えることも考えている。 また、授業実践のための環境整備の充実を優先させて、ソフト購入の代わりに、iPadを追加購入したため、物品費に計画との差額が生じた。 25年度は、学会発表のために一人だけの旅費しか使用しなかった。 研究期間中、ICT関連の動向は日進月歩で変化している。具体的にはWindowsやAndroidをOSとするタブレット端末がiPadに比べて安価であることもあって、急速に普及しており、学校その他の教育機関でも採用され始めてきた。26年度も継続してICT関連備品の追加購入していくが、OSの異なるタブレットの比較検討も行い、今後のICTの音楽教育への活用の展望についても、研究内容に加える予定である。 また、26年度は、オンライン・オフラインの児童・生徒作品の発表に向けて、人件費や会場使用料、サーバーの保守等にも補助金を使用する。
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