本研究は、音楽表現活動のプロセス全体をさす「音楽デザイン」の概念や構想を取り入れ、誰もが音のイメージを具体化し、生活の中に「音の記憶」を根付かせることができる創造的な音楽表現活動の実現を目的とするものである。その一方法として、ICTを活用した音楽学習プログラムの開発と実践を行う。 1年次は、10台のiPadを購入し、愛媛県立松山東高校に協力を依頼し、4人1組でグループ創作を行う実践を試みた。2年次はiPad miniを追加購入し、1人1台で取り組む本格的な創作学習支援システムを整備した。さらに、愛媛大学教育学部附属小・中学校と連携し、学習指導要領に基づく音楽づくり・創作の授業実践を継続的に行った。附属小学校の研究大会では、iPadを用いた授業を公開し、学校関係者から注目された。 3年次は、附属小・中学校に加え、愛媛県立東温高校、川之石高校において授業実践を行い、学年や授業の目的に応じて、アプリの使い分けを試みた。これらの授業実践研究から「音楽デザイン」の概念や構想は、音楽づくり・創作指導に十分生かすことができ、ICT活用はさらに効果を高めるものであることが明らかになった。 研究成果は、愛媛大学教育実践総合センター紀要、日本電子キーボード音楽学会全国大会において発表している。教育関係者のみならず、楽器メーカーからの関心も高く、全国紙(経済紙)に取り上げられた。また、学校教員対象の音楽づくり・創作指導法の実技講習、一般作曲愛好家対象の愛媛作曲協議会主催「えらべる作曲教室」、附属小学校主催「土曜学習」等を通して広く還元している。 本研究で得た知見は、実際に導入を計画している現場からの要請もあり、音楽教育におけるICT環境整備の在り方、授業内容や目的に応じたタブレット端末やアプリの選び方等の提言に役立てるとともに、高等教育における教員養成カリキュラムの開発でも活用を図りたい。
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