研究課題/領域番号 |
24531147
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉村 功太郎 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00270265)
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研究分担者 |
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
渡部 竜也 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10401449)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シティズンシップ教育 / 社会科教育 / 市民性育成 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
研究三年目(H.26年度)の主な研究内容は大きくは次の2点である。 一点目は、米英のシティズンシップ教育カリキュラム等に関する件である。①前年度に引き続き、国際学会であるCitizEd(英国バーミンガム似て開催)に参加し、米英の研究者との研究交流を通じ、シティズンシップ教育の動向や具体的なカリキュラムなどに関する情報収集を行うと共に、特に、当該年度9月より実施される英国の新カリキュラムについての具体的な考え方についても調査することができた。②英国調査を1月に実施し、新カリキュラム導入後4ヶ月を経過した上での学校現場での状況、新カリキュラムのコンセプトに対する英国研究者のとらえ方などについてのインタビューなどを行い、政治的リテラシー育成を中心とする考え方が後退し、キャリア教育や社会的統合教育といった側面がより強くなっているとも捉えられる新カリキュラムになっていることが示唆された(この点については、より具体的な学校教育レベルでの調査と、カリキュラムについての入念な分析が必要と考える)。 二点目は、日本のシティズンシップ教育に関する件である。昨年度からの継続で、宮崎県内及び他県の特色あるシティズンシップ教育的な実践を収集し、そのカリキュラム論的な位置付け、育成を目指している市民像、また、それら市民としての資質・能力の育成方法論などを観点に、分析・評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象とする三カ国のうち、日本の実践についてはデータ収集と分析・評価をすすめ、一部については研究成果の公開まで行っており、おおむね順調である。研究成果のまとめとして、それらの実践の類型化を行うなど、シティズンシップ教育としての位置付け・意味づけを整理することが課題である。 米国については、前年度に調査を実施したニュージャージー州での複数校の実践データなどについての分析作業が遅れており、研究成果としてまとめる作業が課題となっている。 英国については、前年度9月より実施に移された新カリキュラムについての分析・評価を進めており、これまでのカリキュラムとの異同を明らかにする作業を進めているが、具体的な学校教育における実施状況が把握できておらず、新カリキュラム導入1年を経過した時点でのデータ収集が課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度においては、以下のような点を研究の到達点として設定し、具体的な成果のまとめとその公開を行うことを目指す。 ①日本の事例については、各学校での実践の特質を明らかにした上で、育成を目指す市民像とそこに内包されている資質・能力のタイプを観点としてその類型化を試み、その特質の異同を明らかにすることで、日本のシティズンシップ教育についての一面を特徴付ける。②米国の事例については、その実践上の特質を明らかにすると共に、育成を目指している市民としての資質・能力の特質を特徴付ける。③英国については、8月以降に新カリキュラム導入1年間の実践などのデータ収集を行い、それら具体的な教育実践の分析・評価をふまえた上で、新カリキュラムが育成を目指す市民像を浮き彫りにし、以前のカリキュラムとの異同を明らかにすることで、新カリキュラムの特質を明確にする。④日米英の比較を行うことで、それぞれの特質を明らかにすると共に、我が国の市民性育成教育に対する具体的な示唆を得られるよう、教育カリキュラム・実践プログラム上の特質(成果と課題)を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度末までに調査・検討を行い、平成26年度に研究成果をまとめる予定であったが、研究対象の1つである英国の政権交代によって教科シティズンシップが廃止も含めた検討に入ったため、政権の教育方針が決まり、新ナショナルカリキュラムや授業実践が定まってからの調査がよいと判断し、英国調査については一部保留した。結果的には、新カリキュラムへの移行が平成26年9月となり、英国調査に関して未使用額が発生した。 新カリキュラムへの移行を待たずに英国調査を行って研究のまとめを行うことも考えられたが、教科シティズンシップの教科の理念そのものから大きく変更が加えられている中で、新カリキュラムの1年目が終了する平成27年8月前後に最終調査を行った上で分析・まとめを行うほうが意義ある結果を出せると判断した。そのため、未使用額は平成27年度に英国調査を行い、その結果も反映させた研究成果を公表する事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である今年度における交付金は、主に次の2点において使用する。①英国新カリキュラム導入1年経過後の実地調査。具体的には年度が終了する8月以降に英国の学校、シティズンシップ教育研究者がいて教員養成を実施している大学を訪問し、実践記録を中心とするデータ収集並びにインタビュー調査を実施する。②今年度の研究実施計画で述べた通り、研究成果の公開のために学会に参加する。日米については10~11月に開催される社会科教育学会、教育方法学会などを予定する。英国については、2月に開催される社会系教科教育学会を予定する。
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