算数・数学科の学習においてスペシャル・ニーズのある児童・生徒について、1~10年にわたる治療的な教育介入を行ってきた。その記録をデータベース化し、WEB利用可能なシステムを作成した(http://www.dbmath123.edu.u-ryukyu.ac.jp/)。データベース化は、児童・生徒一人ひとりについて行い、介入期間における学習達成の様子(その学習過程における困難を含む)のすべて(どの一部の学習過程も省略することなく)を振り返り見ることができるようにした。そのため、学習困難の一般的な事柄だけでなく、その子ども固有な学習困難の現れ方も観察できる。データベース化された児童・生徒の事例には、知的障がいや発達障がいなどが明確に疑われる場合だけでなく、障がいは明確ではないがスローラーナーや境界児などと言われ、深刻な学習のつまずきが観察される場合も含まれる。また、先天的な障がいだけでなく、水頭症や髄膜炎などが原因の後天的な障がいが学習困難な原因だと考えられる場合も含まれる。 このデータベースは、インターネット環境があれば利用できるので、どんな教育現場からも利用できる。そして、教育介入の教材はプリントベースで、介入教示はヒューリスティックなので(解決方法を教えず、問題解決を子どもに試行錯誤させる方法)なので、かつ、子どもが試行錯誤した結果をそのままデータベース化しているので、教師にとっては目の前の学習困難な子どもに介入を試してみることができる。また、研究者にとって、本研究の成果を検証することができるだけでなく、新たな研究のシーズをも提供する。 開発したデータベースのさらなる活用としては、教師同士の、研究者同士の、研究者と教師との、さらには研究者・教師と学習支援ボランティア・保護者との協働の機会となることが期待できる。
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