研究課題/領域番号 |
24531153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
桂 直美 東洋大学, 文学部, 教授 (50225603)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スズキメソード / 才能教育 / 教師文化 |
研究概要 |
日本発の音楽教育として世界的に高く評価されているスズキメソード(才能教育研究会)において、鈴木鎮一の教育哲学と教育方法の連関がどう理解され、どのように方法次元において定式化され、教師間で伝承されているかを、教師文化という視点から明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、スズキメソードの中心であるバイオリン科において代表的な指導者と目される日米一人ずつの教師のインタビューを中心に分析した。中心的な役割を果たしている名古屋地区の教室から、初歩指導に造詣が深く研究会でも指導的な活動をしてこられた一人の教師に依頼した。また米国のスズキメソードからは、演奏家であり音大の教師でありつつも日米双方の夏期学校の指導歴が長い指導者一人にインタビューした。インタビュイーがとらえるスズキメソードを、それぞれの教師自身のライフストーリーの次元で語ってもらうことを企図して、全体として非構造化インタビューに近い形とし、コンテントアナリシスの他、ケネス・バークの劇学における「五要素」を応用したナラティブ分析を行った。 スズキメソードと呼び習わされる名称が想起させる印象とは大きく異なり、教師たちは固定された方法としてメソードをとらえていなかった。どの個人も育つという普遍性をもった教育理念を追求するために、方法自体はむしろ多様で常に変容を遂げていく側面を重視したものであることが明らかになった。鈴木鎮一の教育理念や生き方に触発され、鈴木の示した教育目的に共鳴し、共有しようとする一群の教師たちの協同実践としての「スズキメソード」というものがあることがわかってきたのである。ナラティブ的探究によって、スズキメソードのもっとも重要な特徴が、実際的な指導方やカリキュラム上の「技術論・方法論」という次元での「メソード」ではなく、教師達の共有する価値、規範としての「教師文化」にあることが示されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の主な研究実施計画は、日本におけるスズキメソードの中心的な地域である名古屋地区において、草創期から鈴木鎮一の活動をともにし、同会において指導的役割を果たしている教師のインタビューを通して研究することであった。これについては名古屋地域のバイオリン教師とチェロ教師のインタビューを得たこと、また米国から招聘した代表的指導者の一人のインタビューを得たことから、教師達の共有する価値、規範としての「教師文化」の次元にこそスズキメソードの独自性を見ることができるということが明らかになった。 また、名古屋地区の教師の助言と協力を得て、次年度において日・米両国の指導者たちのフォーカスグループインタビューを行う準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
日本における指導者のフォーカスグループインタビューを7月に計画しており、特に草創期からの指導者4名を招聘してインタビューを行うと共に、若手教師への指導を行っていただき、これを検討する予定である。第二に、米国シアトルにおいて行われる夏期学校への参加観察を行う。また、米国スズキメソードのチェロ科とバイオリン科における草創期からの教師にフォーカスグループインタビューを行う計画である。また研究費は、インタビューデータのトランスクリプトのためにも用いる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入する予定の消耗品が間に合わなかったので、来年度に繰り越して使用することとする。 したがって、研究費は講師としての指導者たちの謝金と招聘の旅費に、第二に、シアトルにおける夏期学校への旅費として用いる。第三に、インタビューデータのトランスクリプトのためにも用いる予定である。
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