研究課題/領域番号 |
24531154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
阿部 英之助 東洋大学, 現代社会総合研究所, 客員研究員 (10408982)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業高校 / 農業教育 / 生物活用 / 障害者教育 |
研究概要 |
本研究は、農業高校における農業を通じた障害者教育の教育的効果について、明らかにすることを目的としている。具体的には、農業高校での教科「生物活用」の学習方法である「交流活動」や「療法的手法」に着目し、農業高校と特別支援学校との交流授業に焦点をあて、そこでの共同授業の有り方や課題とその教育的効果を検証している。その背景には、現在農業高校では、農業高校の広大な土地を活用し、「特別支援学校」などが併設される傾向が多くなっており、さらには、農業高校内においても発達障害の生徒が入学してくる傾向が多く、彼らへの理解とその学習対応が差し迫った課題がある。 今年度は、調査対象校に対して担当者の異動などもあり、十分な行えなかったが、関西圏にある農業高校の分校への教員への聞き取りも行い、多様な生徒の受け入れやそこでの進路・支援指導などの課題や地域と連携した取り組みの必要性などを垣間見ることができた。また、ドイツ・ミュンヘンへの海外調査もあわせて行い、農業の持つ多面的機能としての園芸福祉の実態やクラインガルテンやシュピタールなどの視察も行い、農業の持つ福祉的機能などに対して理解を深めることができた。今年度は、全国各地で、農業高校と「特別支援学校」との教育連携が進む中で、農業教育における「福祉」的視点からのアプローチの重要性を再認識できた。 また、今年度の研究実績としては、これらの研究成果の一部を『産業教育・職業教育学ハンドブック』と『日本と世界の職業教育』の中に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、調査対象としていた農業高校の担当教員が異動となり、定点的な調査研究が難しくなった。後任である担当教員との調査連携などがスムーズに行かなかったこともあり、実態調査においていささか研究の進展が遅れている。一方で、新たに京都にある農業高校で行われている特別支援及び進路支援の取り組みなどについてその実態などを把握することが出来た。そこでは、農業高校内においても発達障害の生徒が多数入学してくる傾向であり、彼らへの理解とその学習対応のみなず進路保障の問題も含めて、新たな課題を出てきたといえる。学校内のみならず地域社会と行政との連携した進路保障のあり方など新たな検討すべき課題が出てくるなど、再度調査研究の在り方や研究のフレームなど熟考していた点も研究進捗の遅れの要因でもある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、継続調査を予定している東海地方の農業高校と特別支援学校との連携による「共同授業」と「交流授業」に焦点を当てて行く。そこでの授業実践及び運営やカリキュラムなどの分析などを行い、農業を核とした障害者教育の授業課題や教材開発及び共同モデル授業の在り方を検証していく。また、各農業高校で実施されている「生物活用」の教育内容分析を行い、その実態を明らかにし、「農業技術教育」だけでなく「相互理解能力」を学ぶことが可能な授業モデル構築を目指していく。また、「交流授業」に受講している生徒への継続的なアンケート調査を検討することで、「生物活用」での障害者交流が持つ教育的効果について実証的に明らかにしていく予定である。そして、昨年度新たな課題として出てきた、多様な生徒の進路・支援活動の在り方なども継続調査を行いながらアプローチしていく予定である。 また、農業高校教員の障害者福祉に対する理解不足やそこでの授業展開方法のノウハウがないなど、多くの課題もある。農業教育における「福祉」的視点からのアプローチにおける教育的な位置づけやその理論構築などの検討なども合わせて研究課題として進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、農業高校における特別支援学校や障害者を通じた教育実践などの授業分析を、現地調査を中心としながら、そこでの課題・運営上の問題を明らかにしていく。そこでの有効な取り組み方法や課題などを明らかにしていくことで、授業モデル構築に向けた、基礎的フレームと作業分類などを行い、身体障害・精神障害・知的障害などの障害の度合いによる取り組みの整理を行っていく。また必要に応じて「全国農業高校校長協会」、「日本園芸福祉普及協会」や「(独)高齢者・障害者雇用支援機構」から聞き取りやアドバイスを頂きながら調査研究を進めていく予定である。 とりわけ今年度は、昨年度十分に行えなかった、調査対象校に対して定点的な現地調査を実施していく予定である。具体的な現地調査としては、申請者が長年調査してきた東北地域の農業高等学校や障害者交流事業では先進的な取り組みを行っている東海地方の農業高校への現地調査を行う。また、関西方面で園芸福祉に力を入れている農業高校や発達障害を含めた多様な生徒を受けいれている分校への継続的な現地調査を予定している。各学校の授業内容やカリキュラム及び評価方法などの授業作りと各学校での特別支援学校やその生徒との関わりを丹念に見て行く予定である。 また今年度は、少額ではあるが研究費の繰り越しを行った。年度末に他の科研費研究分担者として出張などが重なり、締切との兼ね合いの中で繰り越しせざる得なかったのが理由である。繰り越しを行った分は、次年度において、有効活用するとともに、今年度の研究成果の一部を掲載した書籍の購入に使いたいと考えている。
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