研究課題/領域番号 |
24531156
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
今福 一寿 明星大学, 教育学部, 教授 (50147922)
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キーワード | 剣道指導法 / 竹刀操作技術 / 身体移動 / 動作分析 / 指導マニュアルの開発 / 運動学習 / 技術体系 / 武道 |
研究概要 |
昨年度までは、剣道打突動作の分析を行った。伝統的な基本打突の指導(A)による打突動作の分析と剣道選手が試合で行う打突動作(B)の分析を実施した。その結果、AとBそれぞれの打撃動作の特徴を明らかにすることができた。Aの竹刀操作の特徴は、両腕の大きな上下運動によって竹刀柄頭付近を回転軸に竹刀を回転させ、竹刀先端の大きな円運動の軌跡を伴う打突の特徴が明らかとなった。この時の身体移動は、左脚の反動動作の少ない「送り足」による打突動作であった。「送り足」による打突動作は、身体移動の時に前傾姿勢が生じにくく、左足の引き付けも早く、安定した姿勢で打突できることで竹刀操作がし易く、打撃力の再現性が高かった。打撃力が強くなり打撃動作時間が長くなるなどの特徴が生じていた。 一方、剣道選手の打突動作(B)を分析した結果、肩関節の屈曲動作によって竹刀先端を打突部に「放り込む」動作で、竹刀重心付近を回転軸に竹刀操作していることが分かった。この竹刀操作方法は、竹刀先端の円運動が小さく、打撃力がAに比べ小さい結果であった。また、身体移動は、左脚の反動動作によって踏み切り、右膝を高く引き上げ踏み込んで打突する特徴がみられた。右膝を高く上げ踏み込む動作と肩関節を屈曲しながら腕を上げていく動作は、双対動作になっていると考えられる。この一連の動作は、竹刀重心付近を回転させる竹刀操作に効果的に働いていると考えられた。 AとBの打突動作は異なるもので、相手の隙を瞬時に打突する剣道においては、短時間に竹刀操作できるBの打突動作が有利であると考えられ、AとBの動作は異質の技術であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、この剣道選手の打突方法を、剣道初心者や剣道未経験の体育指導者に短時間に習得させるための練習マニュアル(竹刀操作や身体移動の方法)を開発するために実践的指導を含めながら研究を進める。剣道選手の竹刀操作の仕組みは動作分析の結果明らかにすることができた。しかし、実際に初心者や剣道経験のない体育指導者に竹刀重心付近を回転軸に竹刀操作をさせる技術を効果的に習得させようと考えた場合、具体的にどのような指導の「コツ」や指導言語が効果的であるのかについて実践的な検証が必要となる。これまでの実践的検証から、竹刀を操作する「手の裡」の作用が非常に重要であることが分かった。「手の裡」の動作分析は、非常に困難でその実験的手法について実践的な運動感覚知覚能力が必要となる。しかし、この研究を始めてから動作分析と実践的指導の検証を進めてきた結果、実験方法のヒントを得ることができた。また、「手の裡」と「手関節の動き」および「肘関節」と「肩関節」の使い方について指導の「コツ」があると研究仮説を立てることができた。この「コツ」の解明に向けての実験的検証と実践的検証を重ねてより効果的な指導法の開発を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
①実験的検証結果と実践的検証結果の検討を踏まえ、より効果的な竹刀操作の方法と身体移動の関係について検証を進めていく。 ②「手の裡」と「手関節の動き」および「肘関節」と「肩関節」の使い方について指導の「コツ」があると研究仮説を立証していく。この「コツ」の解明に向けて実験条件を設定し、剣道選手と剣道初心者の打突動作をnacハイスピードカメラで2次元的に撮影し、DKH社製のFreme-diasでその特徴を解析する。 ③剣道選手の打突技術を体系化しまとめる。この技術の明確化によって、剣道初心者や剣道を経験したことのない体育指導者の剣道技術習得のための指導マニュアルを作成する。 ④指導マニュアルを開発し、小冊子にまとめ指導書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ処理に予定していた謝金などの人件費が発生しなかったため。 剣道初心者に対する実験的剣使用を進めるために実験被験者への研究協力に対する謝金や動作撮影を行った画像処理のためのデジタイズ作業や動作分析協力者に対する謝金として研究費を使用したい。また、剣道選手の技術体系や剣道指導マニュアルをまとめた出版物の作成に研究費を使用する。
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