研究期間全体を通して、教育養成課程の学生を対象した授業開発として、防災教育の観点を導入した野外調査・地域学習の指導修得モデルの構築と実施にあたった。最終年度は、研究項目②流域生活圏の災害地名や災害景観に着目した地域学習における授業モデルの構築と実施、および、研究項目③歴史学習と融合させたESDの観点を導入した地域学習における指導修得のための教材モデルの開発を行った。 研究項目②では、境川(旧木曽川)流域の自然環境と輪中地域の流域生活圏を事例地域として、地域観察のための巡検を教員養成課程の学生を対象とした授業や演習などで実施した。地域観察のための観察ポイントを設問形式で具体化するとともに、補助線を用いた観察ポイント(断面図作成)のまとめ方などを開発して、教材モデルとしての学習効果を明らかにした。また、長野市七二会地区の地すべり地形を事例地域として、教育学部学生向けの巡検モデルを検討し、写真教材などで学習効果を検証した研究論文を発表した。 研究項目③では、瀬戸内・島嶼地域の持続性を考える地域教材の開発として、沖家室(周防大島)を事例地域とした「沖家室(周防大島)の人びとと暮らし」の授業プランを作成し、授業や演習などで実施した。また、震災などから都市計画の意義を考える地域教材の開発として、東京(首都圏)をおもな事例地域とした「震災などからみた都市の防災・減災」の授業プランを作成し、授業や演習で実施した。 研究期間全体を通して、災害地名や災害景観に着目した防災教育として意義のある授業プランを提示できたことは大きい。また、歴史学習と融合させた地域教材は、地歴融合を考えるうえで発展的な研究につながる意味で、意義のあるものとなった。研究項目①~③で開発した内容は、関連学会などでその成果を報告(発表件数5)し、研究論文として発表(論文件数9(うち査読付論文5)、図書1)した。
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