研究代表者らは、国語教育に音楽鑑賞を取り入れる試みを平成17年度より実践しており、平成21~23年度の科学研究費などの助成による研究と合わせて約300名の実験協力者のデータを解析し、その高い教育効果を数量的に明らかにした。 本研究では、国語教科書でよく用いられている文学作品を、音楽作品と併せて受講者一人一人の持つタブレット端末(タッチスクリーン式のマルチメディア端末)で読んだり聴いたりできるようにして普通教室で授業を進め、その環境での効果を中心にして実験を進めた。これは、教育現場より強く要望された「高等専門学校や高等学校の国語教科書でよく用いられている文学作品での検証」と「音楽鑑賞設備のない通常の教室での検証」であり、いずれもこれまで同様に高い教育効果があることを確認した。 最終年度にあたり、昨年度開発したタブレット端末を用いたSD法データ収集システムの実用性を検証した。これは、同様の評価コ ンテンツに対して、従来の紙によるアンケートの評価結果と開発したシステムによる評価結果とを比較したもので、両者とも同様の結果になることを確認し報告した。また、文学作品と音楽の関係性を解説の有無による差の視点から比較を行い、単に音楽を聴かせながら文学作品を読むことでは教育効果は少なく、音楽鑑賞は音楽と文学作品の関係性の理解があって初めて文学作品の理解に有効に作用することを明らかにした。 このように、高等専門学校や高等学校での国語授業を想定した、より実践的な実験を進めることができ、その教育効果を系統的に明らかにした。さらに、音楽鑑賞を取り入れた国語の授業指針を示し、そこで用いることができるシステムを構築し、国語教育の基本である文章を読む力の向上に貢献した。
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