• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

異学習環境下での数学的処理の神経基盤とその可塑性機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24531169
研究種目

基盤研究(C)

研究機関独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

矢田部 清美  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所知的障害研究部, 研究員 (90455410)

研究分担者 細田 千尋  株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (20578976)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード数学的処理 / 学習障害 / 感覚運動処理
研究概要

本研究の目的は,数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決・スキル獲得に対する神経基盤とその可塑性機序を明らかにすることである。従来数学的処理には特定の認知モジュールが機能していることが知られている。本研究では数学的処理に他の言語・感覚運動処理等にも広く用いられる認知モジュールも関与しているのか,それらに経験の違いが影響するのかを検討している。
初年度である本年は,経験差のある外的刺激に対する低次の感覚運動処理が高次処理に与える影響を検討した。印刷や既知・未知書字を認識する際の健常成人の脳血流動態を機能的磁気共鳴画像検査法により検討したところ,既知書字は物体認識を司ると考えられる脳部位,未知書字は運動を司ると考えられる脳部位をより強く活性化させるという結果を得た。この結果は脳電図検査法を用いた実験でも一部再現された。また健常成人に正規演算表記とその異形を表示し演算を行わせたところ,理数学習者は異表記の演算により長く時間がかかるといった結果を得た。こうした結果から高次脳機能処理にも表記認識といった外的刺激への比較的早い内的処理が影響している,それは個人内の経験に根ざした反応に因るかもしれないということが示唆された。
一方,数学的処理のような高次脳機能処理はその問題解決に至るまでに比較的長時間の内的処理も要する処理であると考えられる。16週間にわたる言語学習の前後で学習参加者の脳構造を核磁気共鳴画像法で検査したところ,拡散強調画像法による拡散の異方性を利用した白質線維描出結果が学習能力の向上や喪失をより良く示す指標であり得ることが明らかになった。また計画・立案・実行といった遂行機能を要すると考えられる数学的パズルを解いてもらう課題と脳構造画像検査を施行した。これらの研究結果は将来的に数学的処理の問題解決機序解明につながる基礎的研究になると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的である数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決・スキル獲得に対する神経基盤とその可塑性機序を明らかにする点において,数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決に対し,経験差のある個人間・課題間における差異がどの点にありそうなのかを,共時的な視点において検討するという初年度の目標を部分的に3/4程度達成した。腹側経路上の処理と考えられる物体認識処理,それを助けるとみられる背側経路上の処理と考え得る感覚運動処理の差異を,学習者個人の経験差のある刺激を用いることで,一部明らかにした。
また,次年度の目標である,通時的視点における個人内の変化についても,確立すべき手法について,予備的に検討した。

今後の研究の推進方策

数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決に対し,経験差のある個人間・課題間における差異がどの点にありそうなのかを,共時的な視点において検討することを継続する。具体的には,初年度に明らかになった点を精査すると同時に,初年度に新たに検討が必要とわかった,問題解決に至るまでに比較的長時間の内的処理の個人間・課題間における差異の検討をすすめる。
個人間の差異については,その差異が大きく異なるだろうと予想される群間,例えば学習環境が大きく異なることによって処理過程が異なるだろうと予想される,異人種間で検討することを予定し,英国の共同研究予定者との計画をすすめていたが,本研究代表者の機関変更に伴い,(英国側と互換性のある)適した検査設備の長期使用が困難になることから,代替案を検討中である。新規検査設備使用の可能性や新たな共同研究予定を検討する一方,新たな群の募集を検討し,群間比較をすることを予定している。例えば,日本国内においても思春期頃の進路選択や乳幼児期の就学期前後においては,数学を学ぶ経験が異なると考えられるため,そうした集団を対象とした検査が可能かどうか,検討中である。
また共時的な視点において認められそうな差異が個人内で変化しうるのか通時的な視点において検討することを予定している。個人内での可塑性は,問題解決の処理過程に対する個人間の差異が問題解決能力と相関していることを受け,問題解決の処理過程の仮説を補強する材料となることが期待される。

次年度の研究費の使用計画

検査参加者に対する謝金・検査補助者への謝金に加え,共同研究先の検査設備を貸与することになった場合,その貸与料(国外での検査の場合には渡航費),個人の学習過程を検討する上で,学習用具を購入もしくは貸与料が必要と考えられる。また現在使用している検査設備の消耗品・保守保全費,これまでの研究結果を発表,関連する他研究の調査費などを予定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Motor Cortical Beta Oscillations are modulated by Mastery of Observed Handwritings.2012

    • 著者名/発表者名
      Yatabe, K., Inagaki, M., & Watanabe, K.
    • 雑誌名

      Kansei Engineering International Journal

      巻: 11 ページ: 225-233

    • DOI

      10.5057/kei.11.225

    • 査読あり
  • [学会発表] Retrieval of Representations of Mathematical Facts Shaped by Education2012

    • 著者名/発表者名
      Yatabe, K., Inagaki, M., & Watanabe, K.
    • 学会等名
      The Fourth Asian Conference on Education (ACE)
    • 発表場所
      Ramada Hotel, Osaka, Japan
    • 年月日
      20121027-20121027
  • [学会発表] The More / Less Ability, the More / Less Brain Structure2012

    • 著者名/発表者名
      Hosoda, C., Tanaka, K., Osu, R., Honda, M., & Hanakawa, T.
    • 学会等名
      The 42nd Annual Metting for Society for Neuroscience (SfN)
    • 発表場所
      Ernest N. Morial Convention Center, New Orleans, U.S.A
    • 年月日
      20121014-20121014

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi