研究課題
本研究の目的は,数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決・スキル獲得に対する神経基盤とその可塑性機序を明らかにすることである。従来数学的処理には特定の認知モジュールが機能していることが知られている。本研究では数学的処理に他の言語・感覚運動処理等にも広く用いられる認知モジュールも関与しているのか,それらに経験の違いが影響するのかを検討した。最終年度である本年度は,主に,数学的処理といった高次脳機能を必要とする問題解決に対し,経験差のある個人間・課題間における行動的及び生理的反応の差異について,共時的な視点と通時的な視点に基づき,複数の実験施行の継続と取得したデータの分析・まとめ・発表を行った。共時的な視点では,問題解決を図り問題空間内を探索するオンラインゲームにおける成人の意思決定行動と核磁気共鳴画像法による脳構造画像検査結果の関係を分析した。また,推論課題における児童期群や成人期群の行動と近赤外線分光法による脳血流動態検査結果の関係を分析した。通時的な視点では,数系列記憶学習における成人の行動と核磁気共鳴画像法による脳構造画像検査結果の関係を学習期間の前後で分析した。また,推論課題における児童期群や成人期群の行動と近赤外線分光法による脳血流動態検査結果の関係を学習期間の前後で分析した。これら複数の実験結果から,数学的処理に他の言語・感覚運動処理等にも広く用いられる認知モジュールも関与していること,また行動や生理的反応にみられるそれらモジュールの関与は学習や経験により変化しうることが示唆された。
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