研究課題/領域番号 |
24531171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
邑本 俊亮 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (80212257)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文章理解 / 防災教育 |
研究概要 |
東日本大震災時およびそれ以前の地震に伴い発生した津波に対する住民の避難行動についての調査結果を概観した上で、災害時の人間の認知・判断・行動特性について心理学的な観点から分類・整理を行い、災害発生時の人間の情報処理過程のモデル化を行った。さらに、認知・判断・行動に影響を及ぼすさまざまな要因の存在が、迅速な避難行動を抑止している可能性を明らかにした。影響する要因として考えられるのは、具体的には、自分は大丈夫・安全だという勝手な思い込み、受け手の期待による情報のゆがみや無視、情報の持つ曖昧さ・不十分さや情報表現の多様性、受け手の知識不足、ヒューリスティックス(経験則)に基づく判断、心理的コスト、他者の存在、家族の安否への気遣いなどである。また、災害時に必要な情報リテラシーとはどのようなものであるかについて考察し、今後の災害時における情報発信のあり方や防災教育の充実の必要性について、心理学的な観点から提言を行った。 また、上述のモデルを枠組みとして震災エピソードの教材化を目標に、震災エピソードのどのような部分が人々の記憶に残るのかを明らかにするための実験を行うための準備として、①地元地方紙に掲載された記事を中心に震災エピソードを収集した、②文章の読み手が文章読解中にそこから示唆される教訓をオンラインで(自動的に)読み取っているのかどうかを検討するための心理実験を行った。 今後、さらに震災エピソードを収集し、実験で使用するための文章材料の作成を経て、震災エピソードの記憶実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災エピソードの収集は当初の予定よりも少ない状態である。しかし、そうした遅れはあるものの、災害発生時の人間の情報処理モデルを提案することができ、認知心理特性の系統的な分類整理はできている。ただし、提案したモデルは災害発生時に限定した認知過程に関するものであり、今後は、発災前や発災後の応急対応時の認知心理特性にまで視野を広げて行く必要がある(そのためのエピソード収集を続けていかなければならない)。 その一方で、今後実施する予定の文章読解・聴解実験のための準備が予定以上に進んだ。具体的には、教訓を含む文章読解に関する基礎実験を進展させることができた。この実験は震災エピソードを含む文章を用いたものではないが、今後実施を計画している読解実験の予備的実験に位置づけられるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、震災エピソードの収集を続けながらも、震災エピソードを用いた文章の読解・聴解・記憶実験実施に向けた準備に進む。今年度は、実験実施のための文章材料の作成と、可能な限り、それを使用した記憶実験実施にとりかかる。なお、すでに、いわゆる教訓を示唆する文章理解の実験を実施しており、これは、震災エピソードとは関係しない一般的な文章理解研究ではあるが、本研究の予備実験的な位置づけにもなっており、その延長線上で実験を実施できる準備ができている。
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次年度の研究費の使用計画 |
震災エピソードの収集がやや遅れ、それを行うために予定していた物品費・旅費・謝金の執行が十分にできなかった。次年度も、震災エピソードの収集を継続する予定であり、その分を執行するとともに、次年度に請求する研究費と合わせて、予定している複数の認知心理実験実施のための物品の購入、実験補助等の謝金に充てる。
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