研究課題/領域番号 |
24531171
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
邑本 俊亮 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (80212257)
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キーワード | 文章理解 / 防災教育 |
研究概要 |
東日本大震災における震災エピソードの収集を進めた。収集されたそれぞれのエピソードは、長さや内容において多様性に富んでいるため、震災エピソードを用いた心理実験を行う際、実際に用いる実験材料をどのように統制すべきかを慎重に検討中である。 人間が災害等のエピソードを読んだ際に、そこから得られる教訓をオンラインで(自動的に)読み取るのかどうかを明らかにすることは、防災教育教材の作成やそれを用いた教育カリキュラムを考えていくうえで、非常に重要な知見を提供する。そこで、文章読解時における教訓的テーマ推論の認知過程について実験的に検証した。具体的には、あることわざを想起させるような文章を用いて、認知心理学的な実験によって検証した。その結果、日本人の場合は、文章読解中にオンラインでことわざ的な教訓を活性化していることが明らかとなった。しかしながら、中国人を対象とした(中国語の文章による)実験では、明確な結果が得られなかった。 また、既存の防災教育教材の効果の検討にも入った。津波防災教育教材「稲むらの火」を用い、津波に関する既有知識の少ない中国人を対象として、それを読んだときにどのような内容が記憶に残るのか、読み手はその教材をどのように要約するのか、文章中で重要だと感じる部分はどこか、文章からどのような教訓を学ぶのかなどを調べた。現在、データの詳細な分析を進めているところであるが、①津波に関する知識が少ない読み手の場合、津波襲来の描写場面が記憶に残りにくく、要約にも用いられにくい、②文章中で重要だと判断する部分が読み手により異なる、③文章から学んだ教訓として必ずしも「津波が予想されるときの迅速な避難行動の重要性」が多く挙げられるわけではない、のような結果の傾向がみられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の震災エピソードの収集は進んだが、そこには非常に多様なエピソードが存在するため、それらをどのような形で認知心理学実験の材料に用いるかで難航している。しかしながら、その一方で、既存の防災教育教材である「稲むらの火」を用いた心理実験を実施することができ、貴重なデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
防災教育教材「稲むらの火」を用いた心理実験を継続し、その有効性の検証を行うとともに、当該教材を用いて防災教育を行う際の課題について、実験結果に基づいて整理を行う。また、東日本大震災の震災エピソードを用いた心理実験実施に向け、継続的に検討を重ね、準備を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
震災エピソードの実験材料化が難航し、予定していた実験ができなかった。そのため、実験実施に伴う機器や物品の購入や実験実施補助者謝金・実験参加者謝金の執行が十分にできなかった。 次年度は、今年度までの研究成果の発表および複数の認知心理実験実施を予定しており、そのための旅費、および物品の購入費や実験実施補助者金・実験参加者謝金に充てる。
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