研究課題/領域番号 |
24531180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
米山 文雄 筑波技術大学, 産業技術学部, 講師 (20220775)
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研究分担者 |
新井 孝昭 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (70232014)
大塚 和彦 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80331304)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 手話教材 / 生活絵本 / ろう学校 / 授業実践 |
研究概要 |
本研究の目的は、幼児教育および小学校教育において使用されている「絵本」や「教科教材」に手話表現をリンクさせた教材を研究・開発し、さらにネットワークを通した教材の共同利用の実践的意義を検討することによって、可能な共有システムを構築することである。 ネットワークを利用して教材ソフトを共有化するためにネットワークサーバーを構築した。そして、以前から教材開発・研究の協力を続けている沖縄ろう学校教員の要望により、中学保健体育の手話教材を開発し、ネットワークを利用した授業実践を行った。実技や生活との関わりが重要な保健体育では文字による専門用語の説明が多く、生徒の学習理解を難しくしていたが、手話教材を使用することで生徒の反応がよくなり学ぶ姿勢も深まったとの意見が教員から得られた。 本研究課題に関連して作成してきた教材、乳幼児期に使用する「生活手話絵本」や学童期から使用する「社会」「国語」などの教科教材について、その内容をより充実させ、実践での利用範囲を高めるために、ろう学校の訪問を積極的に行い教材紹介と現場教員との協議を行った。その中で、福岡県立直方ろう学校の社会科で使用する教材を作成し、授業実践に活かすことができた。 毎年継続して改良研究を行っている「生活手話絵本(DVD)」については、多くのろう学校教員及び保護者から高い評価を得ており、利用範囲も拡がっている。既に完成している『いちにちのくらし』に続いて、前回の科研費(平成21~23年度)で取り上げた幼児向けの生活絵本『いちねんのくらし』の開発製作が震災の影響で遅延したが、本年度で完成したことも、成果として報告しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前回の科研費(平成21~23年度)で計画した「一年の行事」を取り上げた幼児向けの生活絵本『いちねんのくらし』の開発製作が震災の影響で遅延したことと、その作成時間が予定していた以上に必要となったことで、他の研究計画の進展に遅れが生じてしまった。また、教材の協同開発・研究の可能な聾学校の教員が人事異動で変わってしまうなどの影響で、年度を越えての継続的な協議が不可能になったケースもあり、実践研究が難航したことも計画達成に影響した。
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今後の研究の推進方策 |
手話教材の開発・研究の協力を得た直方ろう学校の教員との連携の下で、教材授業実践と教員・児童からの評価、及び手話教材における効果についての分析・検討を頻繁に行い、手話表現などの地域性を考慮しながら、教科書1年分の手話教材の完成をめざす。完成後はサーバーに取り込み、手話教材の授業実践希望のろう学校から閲覧できるようにする。そのうえで、教材としての質の向上、ニーズ分析を行う。 戸外でおこなうことも多い保健体育の授業では、利便性と携帯性の高いiPadを使った手話教材が欲しいとの要望があり、そのことを踏まえたタブレット端末が利用できる手話教材の開発・研究にも着手する。そのために、本年度は、沖縄ろう学校の体育教員との共同研究を行い、授業実践での効果について分析・検討する。 さらに、DVDとして作成した生活絵本は、ろう学校教員および保護者から非常に好評であるので、より広く利用してもらうことを意図して、インターネットで公開し閲覧できる環境を構築する必要がある。また、新しく作成された生活絵本『いちねんのくらし』も、要望のあるろう学校の教員およびろう児をもつ保護者に無料配布し、インターネットにも公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
教材の協同開発・研究の可能なろう学校の教員が人事異動で変わってしまうなどの影響で、年度を越えての継続的な協議が不可能になったケースがあって、訪問する予定のろう学校が減ったため次年度使用額が生じてしまった。 備品:研究計画として「iPad端末を利用した手話教材」を新たに加える必要が生じたため、iPadのアプリを開発するためのMacのノートパソコンを1台、授業実践で利用するiPad端末を2~3台、この次年度使用額で購入する。 旅費:本研究を進める上で必要な人的な教育環境(教員、幼児、保護者)を調査し実践校を選定するために必要な協議のための訪問をする。本年度のろう学校への訪問が当初計画通り進まなかったため、翌年分と合わせた旅費のもとで、訪問機会を増やす予定である。それと同時に、研究開発した教材の有効性を評価・分析するために、連携するろう(特別支援)学校へ出向し、授業記録の採取や教員との協議も増やすことになる。 謝金:本教材の開発・研究にとって、教材に取り込む手話表現の選択は非常に重要な作業であり、高い手話表現能力と同時に、幼児・児童に通じる表現能力も必要となる。手話表現者として適する人材(2名)を依頼・派遣してもらい、本学のスタジオでの撮影を行う。そのための交通費及び謝金を支払う。また、授業記録分析やイラスト作成の際に研究補助者(短期雇用)として2名が必要であり、謝金を支払う。 消耗品費:教材ソフトを開発するためのプログラム開発用ソフトとイラストレーター用ソフトは、一年ごとにバージョンが変わることがあり、必要な場合は購入する。また、大量の映像を記録・編集・保存するために外付けハードディスク、DVテープ、DVD-R等も購入する。
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