研究課題/領域番号 |
24531180
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
米山 文雄 筑波技術大学, 産業技術学部, 講師 (20220775)
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研究分担者 |
新井 孝昭 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (70232014)
大塚 和彦 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80331304)
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キーワード | 手話教材 / 生活絵本 / ろう学校 / 特別支援学校 / 授業実践 |
研究概要 |
日常的に手話でコミュニケーションを行う幼児や児童の生活・教育環境資源の充実を願う本研究では、幼児教育および小学校教育において使用されている「絵本」や「教科教材」に手話表現をリンクさせた教材の研究・開発を行い、ろう学校(聴覚障害児対象の特別支援学校)で使用する教材の共同利用の実践的意義を検討しながら、可能な共有システムの構築を進めている。 1.本研究での継続的な協力校からの要望を受け、体育の授業やクラブ活動などのように屋外や特別な場所で行う活動の際にも生徒が自主的に利用できるタブレット端末(iPad)仕様の教材を開発・作成し、体育科授業で実践した。生徒自身による学習確認が活発に行われ、指導効果も高まったことが教員から報告された。 2.小学6年社会科の補助教材として、年表に手話表現をリンクした歴史教材を試作し、ネットワーク環境を利用して授業実践を行った。年表に示される人物や事項に関する手話表現を通して児童の反応が活発になり、学ぶ姿勢がより深まったとの考察が教員から得られた。 3.前年度までに製作してきた『いちにちのくらし』と『いちねんのくらし』を統合した生活絵本『こどものくらし』について、多くのろう学校幼稚部で紹介しながら再評価を受けた。ろう学校教員や幼稚部保護者からの評価が高いことに加えて、その利用範囲もろう学校の早期支援部の保護者や寄宿舎職員、難聴学級関係者へと拡がった。ろう学校教員や保護者から要望が出されていたタブレット端末(iPad)での利用を可能にするため、iPad仕様の生活絵本『いちにちのくらし』と『いちねんのくらし』を開発・製作した。今後は、Apple社に出品手続きを行い、ネット上からのフリーダウンロードの実現と教育的資源としてのあり方を明確にしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小学6年社会科の補助教材として、教科書1年分の手話教材の開発を進めてきた。しかし、4年ごとに行われる教科書の改訂に伴う教材の作り直しや、家庭学習等に生かすのには教科書の著作権の問題があり困難であった。そのため、教科書を使わない方法として年表に手話表現をリンクした歴史教材を開発することに計画を変更したため、研究に遅れが生じた。 また、教材の協同開発・研究の可能な聾学校の教員が人事異動で変わってしまうなどの影響で、年度を越えての継続的な協議が不可能になったケースもあり、実践研究が難航したことも計画達成に影響した。
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今後の研究の推進方策 |
手話教材の開発・研究の協力を得た沖縄ろう学校と坂戸ろう学園、大宮ろう学園の教員との連携の下で、教材授業実践と教員・児童からの評価、及び手話教材における効果についての分析・検討を頻繁に行い、手話表現などの地域性を考慮しながら、日本史年表の手話教材の完成をめざす。完成後はサーバーに取り込み、手話教材の授業実践希望のろう学校から閲覧できるようにする。そのうえで、教材としての質の向上、ニーズ分析を行う。 生活絵本DVD『いちにちのくらし』と『いちねんのくらし』を統合して製作した生活絵本DVD『こどものくらし』は、ろう学校教員や幼稚部保護者からの評価が高いことに加えて、その利用範囲もろう学校の早期支援部の保護者や寄宿舎職員、難聴学級関係者へと拡がった。さらに、より広く利用してもらうことを意図して、インターネットで公開し閲覧できる環境を構築する。また、iPad仕様に製作完了したiPad用生活絵本『いちにちのくらし』と『いちねんのくらし』は、アップル社が運営する「App Store」に出品し、無料でダウンロードできるようにする予定である。それが可能になった際には、全国のろう学校(特別支援学校)およびろう教育関係研究会等にメールなどで紹介する。 パソコン用の『こどものくらし』およびiPad用の『いちにちのくらし』と『いちねんのくらし』の使用を通しての改良点を拾い出し、収録単語や説明表現の修正と増量を行い、アップグレートする。
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次年度の研究費の使用計画 |
教材の協同開発・研究の可能なろう学校の教員が人事異動で変わってしまうなどの影響で、年度を越えての継続的な協議が不可能になったケースがあって、訪問する予定のろう学校が減ったため次年度使用額が生じた。 25年度のろう学校への訪問が当初計画通り進まなかったため、26年度分と合わせた旅費のもとで、訪問機会を増やす予定である。それと同時に、研究開発した教材の有効性を評価・分析するために、連携するろう(特別支援)学校へ出向し、授業記録の採取や教員との協議も増やすことになる。
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