研究課題/領域番号 |
24531181
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
加藤 宏 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (50177466)
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研究分担者 |
一木 玲子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (20351174)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教職課程 / 免許法施行規則 / 設置基準 / 特別支援教育 / 含む規定 / 国際情報交換 / 開放制 |
研究実績の概要 |
平成10年の改正免許法で規定された、全ての教職課程履修者が障害のある児童・生徒の発達と学習について学ぶべきこととする教員免許法施行規則の「含む」規定の形骸化の要因と実態を、26年度も引き続き調査した。結果として、26年度においても養成課程を設ける大学の過半で法令が遵守されていない実態が明らかとなった。この事態の原因には主に2つが考えられた。ひとつは、教職課程の運営が中小大学や教育学部を持たない開放制養成大学を中心に一部の「教職科目」担当専任教員に任され、全学的な教職課程の管理運営体制が構築されていない、あるいはあっても実質的には機能していないということである。もう一つは、教職課程を担当する教員の教員養成行政に係る法令等への認識不足があげられる。 開放制養成大学と国立の教員養成大学・養成学部の違いでは、養成学部を持たない大学と同じく法令が遵守されてない実態があるにも関わらず、教員養成学部を有する大学では、組織としては法令順守は最低限守られているはずという建前の上で組織運営がなされやすく、足元の学生の「特別支援に関する事項の未学修」が見逃される事例もあった。法令順守大学では、性善説による前提に依らず全学的組織とガバナンス体制が構築されていることが訪問調査からも明らかとなった。平成27年4月施行の文科省令改正教育職員免許法施行規則では、教職課程を有する全大学に養成理念、運営組織・規定、教員業績、シラバス等の公開を義務付けているが、この改正により、実地視察等によらずとも「含む規定」の遵守状況はチェック可能となった。 また特別支援教育で先行する諸外国についての調査では、イタリア、フランス、米国のほかアジア・アフリカ諸国での実体を国際会議等での情報交換や実地で調査を行ったところ、特別支援教育導入前の既存の学校システムとの軋轢から来るさまざまな問題が生起してきていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
開放制養成による大学は数も多く、国立・公立・私立にまたがり、またまとまった統括組織もないので個別の訪問調査等にたよるケースが多く、総合的な実態が把握しにくかった。一方、公開されている資料等からは開放制養成大学では特に大学全体としての管理運営体制の弱さが指摘されている。今後は大学規模と設置形態にバラエエティを持たせ、できるだけ多くの大学を選択し、残りの研究期間に実地調査等を行う。改正教育職員免許法施行規則施行後には、全ての養成機関に全科目のシラバス等がインターネット等に公開することが義務付けられるので、今後の調査は効率化できると考えられる。開放制でない目的養成系の大学も、目的養成制であるが故の事態に即しない建前上の法令遵守という実態が明らかとなったが、こちらについても目的養成制大学独自の学内ガバナンス体制不備を生み出す構造を分析するための十分な調査を行えなかった。また、海外調査では一部政情不安定地域への調査を含んでいたため国際情勢の変化に伴い調査が遅れていたが、今後は国際会議等の機会も活用して情報収集と分析に努める。海外研究者を招聘してのシンポジウムを計画していたが、こちらはシンポジストの健康問題で開催を中止した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで国立大学や教員養成学部のある大学の教員養成と特別支援教育の必修事項の関係を中心に調査してきたが、今後はより小規模大学、あるいは少人数により教職課程を運営している私立大学や小規模大学を中心に特別支援教育に関する必修事項の学修保証の実体と問題の構造を明らかにする調査および実地視察を行う。 海外の調査では平成27年9月にインドネシアで行われる国際視覚障害者教育会議東アジアにて、我が国の特別支援移行以後の教員養成教育における障害事項の学修保証の問題および本学におけるICT活用と聴覚視覚障害者の教員養成カリキュラムにおける合同授業の実体を発表する。また、この会議ではアジア地区の研究者教育者から、各国の特別支援教育の実体と教員養成の情報収集を行う。さらに平成27年度中には視覚障害者のための教員養成カレッジを有するサウジアラビアのプリンス・ムハンマド(PMU)大学を視察し、障害者のための教員養成カリキュラムの調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に特別支援教育体制下の教員養成に関するシンポジウムを実施する予定であったが、海外からの招聘予定者の健康上の理由により開催を断念した。また国際情勢の変化による海外渡航困難区域拡大により海外事例調査対象の見直しをする必要が生じた。また、国内調査および視察に関しても、国内調査の分析評価の遅れにより実地調査校の抽出が遅れたため、調査未了大学が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
いままで調査できなった中小大学を中心に、実地視察で問題を指摘された大学、反対に開放制の中でコンプライアンス体制の確立された大学の双方を視察し、指摘事項への改善策と全学体制の関係を分析する。海外の先進事例調査としてサウジアラビアPMU大学の視覚障害者のための教員養成カレッジの視察を行う。また、インドネシアバリで行われる国際視覚障害者教育会議東アジア(ICEVI East Asia)に参加し、日本の視覚障害者の教員養成カリキュラムおよびICT活用の実体について研究発表する。次年度使用額は、これらに必要な旅費等に使用する予定である。
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