本研究は,原木を有効利用する挽き材の在り方,それを用いた彫刻制作,挽き材して得られた素材を用いた造形教育用素材の試作開発を課題とし,以下の成果が得られた。 基礎調査で東北3県の林業・木材加工研究所,製材・木工業者を見学し,木材資源の有効活用のための品質改良,加工開発の現状を視察。本研究では歩留まり(原木体積に比し廃棄する部分を除き有効利用された割合)を高くする木材の使い方の検討が中心課題になることを確認した。原木からの製材試行を繰り返し,個人レベルの作業環境でも板状・柱状に歩留まりよく挽き材する具体的方法が得られた。さらにその材の特徴を生かした彫刻制作が多様に展開でき,作品は「国展(国立新美術館)」「次代を担う彫刻家たち展(現代彫刻美術館)」「中之条ビエンナーレ(群馬県中之条町)」等に発表した。 得られた技術と知見を生かし,原木から挽き材した板状材で,その特徴を生かした造形用素材試作を進めた。造形用素材の形体として,積木様の板状木片が製作技術面で応用可能であり且つ多量に製作でき,教育現場での利用に有効であることを検証した。試作品は群馬大学教育学部附属幼稚園において幼児に提示し,実際にどのような造形活動が展開されるか観察,検討した。これらの成果から,教育現場において木材を有効に利用しながら造形教育に資する素材製作ができることが示された。この成果は,日本美術教育研究発表会において口頭発表(2015年)すると共に,実践をまとめたものは『日本美術教育研究論集第49号(2016年)』(発行:公益社団法人日本美術教育連合・査読あり)に掲載された。 本研究の成果から,木製積木などの造形用素材の国内外における現況調査と,一層の試作と教育現場での検証が更なる課題となり,引き続き平成28~30年度に科研費助成事業(基盤研究(C)課題番号16K04739)として研究に取り組むことになっている。
|