研究課題/領域番号 |
24531191
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 治人 信州大学, 教育学部, 准教授 (70449776)
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キーワード | 吹奏楽指導者 |
研究概要 |
本研究2年目に入り、吹奏楽指導において最も重要ともいえる『ピッチ(音程)』を合わせることに主眼を置いた指導を行った。 前提として、ピッチが合わないという現象が発生する大きな要因の一つとして、使用する楽器が「音程」を持たない、いわゆる『作音楽器』であることを説いた。そして、それが故に演奏者自らが正しい「音程」を確認しながら演奏する必要があることを認識させた。その上で、生徒達の演奏を耳にし、指導者自身が音程のズレ(響きの濁り)を認識できること、また、そのズレをどのように改善していくかの指針を申請者自らが既成の教本や資料を用いて指導を行うことで例を示した。 一つの例として、倍音の聴き取りが挙げられる。オクターブの音程を持つ任意の2つ以上の音を鳴らすと、第5音が自然発生する。その音を聴き取り、第5音を鳴らすと長三和音の第3音が自然発生する。その音を聴き取った上で第3音を鳴らすと、理想的な長三和音の響きが完成する。この例は、目新しいことではなく、ある一定の指導力を持つ者にとっては常識ともいえるかも知れない事例であるが、研究対象となる教員にとっては、未知の事柄であることが多い。 また、チューナーの使用法についても言及し、「楽器を鳴らす力」をつけるための練習と、「音感を養う」ための練習(訓練)を同時進行で行うことの必要性を説いた。ただし、ここでいう音感とは『絶対音感』ではなく『相対音感』のことである。音感が高まることで、正しい音程が感じられ、それを楽器で鳴らす音に反映させるというプロセスを意識しつつ実践した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一つの根拠として、吹奏楽コンクールでの審査評価に向上が見られた学校が複数校あったことが挙げられる。 本研究において申請者が行う指導は、巷で行われている指導者講習会とは異なり、単発ではなく、申請者自身が継続して現場の指導者と生徒達に関わり、演奏の質的向上について論理的、実践的に進めることを特徴として掲げている。 その中で、申請者と指導者との懇談において、指導者が吹奏楽指導を行う上で自分自身に不足している力を具体的に認識できるようになってきていることが言葉の端々から感じられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度に入り、『音』に関する意識から、より『音楽』に意識を向けるスタンスに立ち、総合的に合奏を組み立てていくプロセスを中心に進める。 演奏を単なる『音』への物理的な処理という側面からのみでの指導ではなく、指導者が『音楽的』にどうあるべきかと捉えた上で、自らの音楽イメージに則して向上させていくことを説き、実践する。 そのために、申請時には触れなかった、楽曲分析と指揮法についても言及していく必要性を感じている。 指導回数にバラつきが生じているので、依頼回数の少ない学校には、当方からも打診を行うようにする。 申請時には、指導者向けのDVD制作を盛り込んでいたが、予算の関係上、指導者、生徒へのアンケート回答を基盤にした「指導ガイドブック」のような資料を作成することに変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況により、当初計画していた出張を次年度実施することとなったため、次年度使用額が生じた。 26年度の経費は計画通りに使用していく。その中で、研究のまとめとして、指導者および生徒を対象とした「吹奏楽指導ガイドブック」作成を考えており、25年度未使用額も合わせてその経費にあてる。
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