研究課題/領域番号 |
24531193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
江口 啓 福岡工業大学, 工学部, 教授 (00321521)
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研究分担者 |
紅林 秀治 静岡大学, 教育学部, 教授 (60402228)
朱 紅兵 広島国際学院大学, 情報デザイン学部, 教授 (90284736)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教材開発 / 技術教育 / エネルギー変換教材 / 計測・制御教材 / 技術・家庭科 / 国際情報交換 / 中国:タイ |
研究概要 |
平成24年度においては、提案教材の設計の基礎を確立するために、機能ブロックの核となる遠隔操作型のロボット教材の開発と、クリーンエネルギーを効率よく変換するための種々の小型電源回路の開発を行った。具体的には、ロボット教材の開発では中学生を対象として、中学校技術・家庭科の技術分野における「エネルギー変換」ならびに、「プログラムによる計測・制御」を学習するための遠隔ロボット教材を設計した。試作した教材では学習者端末のインターフェースとしてインターネットを使用し、プログラムの作成をウェブアプリケーションから行う。このため、インターネット環境があれば生徒はどこでも学習を行うことができる。すなわち、これまで授業内だけで行われてきた学習の一部を授業外でも可能にすることで、生徒の科学技術に関する知識と能力を向上させることが期待できる。試作教材に関しては、現場教員と中学生を対象とした実践授業によって評価・検討を行った。授業後のアンケートの結果、試作教材によってプログラムの基本三構造を学ぶことができ、生徒の授業外学習を支援する教材として活用できる可能性を示した。一方、小型電源回路の開発では、上述のロボットに搭載することを念頭に置き、コイルを用いないスイッチト・キャパシタ方式で電源回路の設計を行った。設計した回路は、リチウムイオンバッテリの電圧(3.7V)を昇降圧変換できることを、回路シミュレータSPICEならびに、理論解析による特性評価によって明らかにした。さらに、本年度はこれらの教材の開発に加えて、今後、提案教材を学校現場へ導入することを念頭に置き、生徒の安全衛生意識を高めるためのKYTを用いた安全教育教材の開発も併せて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画においては、①提案教材の機能ブロックの開発と原理機を用いた検証と、②原理機を用いた実践授業による提案教材の検証を目標としていた。研究実績の概要の項目で述べた通り、平成24年度においては小型電源回路の教材への実装がまだ完了していないものの、提案教材の核となるロボット教材の開発を行うことができた。また、開発を行った教材に関しては、中学生を対象とした実践授業を行うだけでなく、中学校の現場教員を対象とした実践授業も行うことで、提案教材に関するより深い評価・検討を行うことができた。さらに、これらの研究実績に加えて、今後、提案教材を学校現場へ導入することを念頭に置き、生徒の安全衛生意識を高めるためのKYTを用いた安全教育教材の開発も行うことができた。これらの研究成果については、学術論文2件、ならびに、国際会議発表4件として公表を行った。以上の理由により、平成24年度の研究実施計画を概ね満足しており、本研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の3つの事柄に関して研究を実施する予定である。 1.平成24年度の段階では未実装であった小型電源回路のロボットへの実装を行うことで、提案教材の機能の追加と改善を行う。さらに、より完成度の高い教材を開発するために、教育現場での実践授業を行う前に、提案教材の原理機の改善と事前評価・検討を行う。教材の事前評価と検討においては、研究代表者らだけの視点では客観性を欠く恐れがあるため、教育現場での実践授業を行う前に、大学生を対象とした実践授業とアンケートを基に事前評価と検討を行う。 2.提案教材を授業に導入するにあたり、授業をより効果的に進めるための補助教材の開発を行う。具体的には、授業者と学習者の双方向授業を実現するための無線通信システムを構築することで、①授業者からの質問、②授業者の質問に対する学習者からの回答、③学習者の回答に対する授業者からの解答と助言の提示、までの一連の流れをシームレスに行うことを補助する。試作する補助教材については、まず、大学生を対象とした実践授業によって評価と検討を行う。 3.提案教材による科学教育を国際的な視野でとらえるため、諸外国における授業実践を調査・研究し、国際的評価を確立する。具体的には、研究代表者らが管理・運営に携わっている国際学会の協力の下で、中国やタイなどのアジア諸国における「ものづくり教育」や「エネルギー教育」の実態調査や、諸外国の教育機関での「ものづくり」や「技術的素養」に関する生徒・学生の意識調査を行うことで、提案教材の国際評価を確立する。このように、国内外からの評価・検討を重ねることで、多面的な教材開発を行う。なお、これらの調査活動を充実させるために、本年度の予算の一部を次年度の海外渡航旅費として充当する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、本年度開発を行った教材の改善を行うだけでなく、国内のみならず海外の教育機関も含めた生徒・学生の「ものづくり」や「技術的素養」に関する意識調査、ならびに、海外の教育機関における「ものづくり教育」や「エネルギー教育」の実態把握を行うことを計画している。これらの調査活動を行うためには、国内のみならず、海外へ複数回渡航するための旅費が必要となる。また、英語圏以外のアジア諸国の生徒・学生にアンケート調査を実施するためには、日本語から調査対象国の公用語で記述したアンケートが必要となるため、この翻訳作業費も必要となる。これらの調査活動に、当該研究費を充当する予定である。
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