研究課題/領域番号 |
24531197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
田中 宏子 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (00324559)
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研究分担者 |
秋山 元秀 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00027559)
木全 清博 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40142765)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カリキュラム構成・開発 / 教員養成 / 学校 / 災害対応 / 減災 |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災の被災地における学校の被災実態を踏まえて、教員養成課程における大学生のためのより充実、発展した災害対応教育プログラムの開発を目的としている。 東日本大震災の被災地における学校の実態を調査するために、資料等の収集と併行して、被災地の学校に滋賀大学の学生をスクールサポーターとして派遣し、観察・ヒアリングを行った。今回の震災で被災教員たちが膨大な回復作業をこなしている状況を考えると、教員を目指す学生がこれらの教員の手足となるような体験をすることは教師訓練上非常に有効である。また学生にとっても活動で得た経験は将来教員となった時に活かされないといけない。一方初めての学校でかつ短期間の活動であったため、教員も児童生徒も困難な状況下における互いの接し方に戸惑いが顕著にみられた。震災前からサポーター活動を行って信頼関係を構築している地元の学生が核になるシステムや、他の教員養成大学がそれに合流連携するシステムなど災害に効果的に対処できる大きな組織づくりが必要である。現在の日本の学校には発災後速やかに対応するシステムはなく、学校は災害時に地域の避難所になるのみである。これでは教師が学生を統括することはできない場合が多い。今後起こりうる大災害で学校支援システムを機能させられるようパラダイムが必要である。 さらに日本の教員養成課程の学生が、自然災害に備えて何を学んでいるか現状把握のために、日本教育大学協会に属する大学のシラバスを精査した。これらの学生は殆ど災害対応を学んでいない現状があり、教員養成カリキュラムとしては、災害対策上不能であることを明らかにした。 学校における災害学習に関する研究では、社会科の学習指導要領と教科書の災害関連内容の分析を行い、過去の授業実践記録を調べて、今後あるべき学校教育における教員養成カリキュラムを強化する視点で災害学習のあり方を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の被災地における学校の実態は、被災地の学校に滋賀大学の学生・院生をスクールサポーターとして派遣し、観察・ヒアリングを行った。これより、震災前からサポーター活動を行って信頼関係を構築している学生が核になって支援に入るなど、他府県の教員養成大学との連携も含めて、今後起こりうる大災害に向けて教育支援システムの構想を練る必要性が浮かび上がるなど、一定の知見が得られた。しかし、東日本大震災の被災地における学校の実態を把握するまでには至らなかった。その理由は、あくまでも現地の学校の現状、ニーズを第一に考え、対象校を拡大しなかったからである。これについては、被災地の学校教育関係者らの手記等の資料から、災害後、刻々とかわる場面への教師の対応事例を、地震発生後の時間経過にそって並べ整理し、学校の災害対応8つのステージを把握した。今後ステージごとの対応について検討する予定である。 対象校を拡大しないという、この研究を遂行する上での課題に対して、申請時の研究計画を若干変更せざるを得なかった、視点を変えWebシラバスを用いて教員養成大学における災害教育の実態を明らかにした。このシラバス調査が、次の研究の糸口ともなり、教員養成大学の学生が、自然災害に備えて、何を学んでおく必要があるかについて、現在災害教育を行っている大学教員に調査を行い、情報を共有してネットワークを広げることにより、教員養成課程における「災害対応教育プログラム」を検討することにした。 従って、現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
被災地の学校・教師・子どもの実態や課題については、主に収集した資料等を整理・分析し、それらの結果を踏まえて学校の災害対応について検討する。併せて、被災地の学校に滋賀大学の学生・院生をスクールサポーターとして派遣しての観察・ヒアリングは、被災地の学校の状況を第一とし、また被災地の学校をフィールドとした他の研究と重ならないよう配慮した上で行う。 一方、平成24年度に行ったWebシラバスを用いて行った教員養成大学における災害教育の実態調査は継続する。平成25年度は、災害スクールサポーターシステムの構想も含めて、全国の教員養成課程で災害に関する授業を行っている大学教員に「教員養成課程における大学生のための災害対応教育プログラム」についてのアンケート調査を実施する。この調査は一度で終わりにする調査ではなく、数回のやりとりを繰り返し、内容を深めていく予定である。その結果を「災害対応教育プログラム」に反映させたい。 研究スタート時から行っている災害学習の教育実践の分析については、平成25年度は、教科社会科に加え、家庭科についても行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、被災現地でのフィールドワークを行うため、研究者の旅費および現地での活動費、加えて学生の参加がみこまれるので、賃金・謝金が必要となる。活動期間は10日間とし、学生は年間延べ4人、教員は2人が参加する旅費として580千円を見積もっている。 全国の教員養成大学の災害に関する授業を担当している大学教員を対象としたアンケート調査を実施する。調査のための印刷費、郵送費、アンケート調査集計・分析にかかわる経費として380千円が必要となる。 中学校家庭科教員を対象とした「自然災害に対する備え」の単元に関する調査も行ため、印刷費、郵送料、調査集計・分析にかかわる経費、100千円が必要となる。 成果発表費として、東京1泊2日2人として92千円を、中間報告書として20千円を見積もっている。 コンピュータ関連等の消耗品として28千円を見積もり、総額1200千円となる。
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